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パリとロンドンで活動していた沖縄県那覇市出身のファッションデザイナー工藤司さん(30)が今年4月、東京に拠点を移し、新たな活動を始めた。大学卒業後にデザイナーを志し、ベルギーやパリで学び直したという経歴の持ち主。スーツなど形式張った服を崩したデザインが海外で評判を呼んだという。都内で自身のブランドを売り出した工藤さんは「沖縄から多くのことをもらった。いつかは沖縄に貢献したい」と語る。目標は県内でのファッションショー開催だ。

 

ファッションに興味を持ったのは幼稚園の頃。「祖母と一緒に訪ねた仕立屋で服が作られていくのを見ているうちに、くぎ付けになった」と振り返る。

 

昭和薬科大付属高校を経て早稲田大学社会科学部で学ぶが、幼少時から抱いていたファッションへの関心が膨らんだ。大学卒業後、5年ほど前にファッションスクールの名門校ベルギーのアントワープ王立芸術アカデミーに進んだ。フランスでもファッションデザインの技能を磨いた。

 

卒業後、パリ、ロンドンで活動した。世界的に高い評価を受けているロンドンのファッションブランド「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」のコレクションに参加するという幸運に恵まれた。

 

ビザ更新などのため帰国した折、都内のファッション関係者から誘いがあり、日本に拠点を移した。原宿や新宿の店舗で自身のブランド「TSUKASA・KUDO(ツカサ・クドウ)」を売り出したばかりだ。伝統のあるファッション雑誌「装苑」の最新号で工藤さんの作品が紹介される予定という。

 

5年間の海外生活の間も心のよりどころは沖縄にあった。「小さな島なのにダイナミズムにあふれている。沖縄を離れ、そのことを強く感じた」と語る。沖縄の歴史や自身のアイデンティティーを作品に打ち出すことはなかったが、今回、米統治下で沖縄民政府が採用した沖縄旗をモチーフにTシャツを制作した。売れ行きは上々という。

 

「壊れていく秩序に揺れ動く少年」を創作活動のテーマに据えている。世界が混乱期に陥った時、人々はどう対応すべきかをファッションで表現したいと願っている。「沖縄で基地反対運動が高まっている。2年半過ごしたパリでは同時多発テロ事件が起きた。崩れたデザインの服に明るい生地を使用することにより、混沌(こんとん)とする世の中に希望を見いだしたいとのメッセージを込めた」と語った。

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