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「母親なら育てられて当たり前、との社会常識に、親自身も苦しんでいる」と訴える杉山春さん

 

◇11月は「児童虐待防止推進月間」

 

ルポライターの杉山春さんが講師を務めた沖縄県の虐待防止推進事業講演会が11月8日、名護市民会館中ホールで開かれた。

 

杉山春さんは「SOSが出せる社会へ 助けを呼べないひとり親の支援」と題して講演。「母親であれば子どもを育てて当たり前」という家族規範に縛られ、親自身がうまく子育てできない自分を責めて公的支援を使えない状態に陥っていると指摘した。

 

その上で、支援者に対しては自分の五感を信じて一歩踏み込むことや、行動を下支えするための知識を持つよう求めた。

 

加害者も被害者

 

杉山さんは2000年に愛知県で起きた3歳児の餓死事件と、10年の大阪市で2児が置き去りにされ餓死した事件、07年に当時5歳の男児が死亡し14年に発覚した神奈川県厚木市の虐待死事件の背景を取材した。

 

取材では、加害者となった親自身も子ども時代に虐待を受けたり、手を掛けてもらったりする経験が不足して孤立し、大人への信頼を育めていないことが分かったという。愛知県と大阪市の事件の母親は、過去に性被害に遭いながらその事実を周囲に認識されず、支援が必要な子どもと捉えられていなかった。

 

暴力を繰り返し受け、自尊感情を持てなくなったことも共通点だとした杉山さん。「愛知と大阪の母親は、子育てが順調な時は公的機関とつながれていた。だが、子育てがうまくいかなくなり自己を認められない時には、外からの評価を恐れ、助けを求められなかった」と当時の心情を推し量った。

 

事件を起こす以前に3人の親がいずれも懸命に子育てをした時期があったことを伝えた上で「親なら育てられて当たり前、との社会常識に苦しむのは、うまく育てられない親。育てられないあなたが悪いと個人の責任にして善悪でジャッジする限り、支援を広げることは難しい」と訴えた。

 

背景に家族規範

 

子どもの貧困が深刻化する背景には、男性が稼ぎ、女性が家事育児のケア労働をするという家族の規範があったと分析する。「女性が就労してきちんとリターンをもらえ、母親以外の価値があると伝えられる社会、子どもが子どもとして育っていく社会の仕組みを作り直す時代にきている」と指摘した。

 

精神疾患を患う母親の元で一度は高校進学を諦めた息子の進学支援の事例を通し、「適切な支援が入ると、家族同士が信頼し合ったり、心を分け合ったりする関係性をつくれる。支援を受けることは、家族をつくることにつながる」とも語った杉山さん。今の自分の状況に合わせて、社会の支援や資源を使って子育てをしていくことが難しい人たちを、行政や地域が理解し支えながら地域の中に居場所をつくっていく必要があると訴えた。