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与那国島のパクチー「クシティ」を紹介する大宜見稔さん。40年間にわたり大切に栽培を続けている=20日、与那国町

 

沖縄県の与那国島で昔から親しまれ、島民が「クシティ」と呼ぶ香草パクチーの魅力を広めようと、さまざまな取り組みが始まっている。与那国町は昨年9月に、12月の第2日曜日を「クシティの日」とする条例を制定。町の担当者は「適地適作にこだわって勝負していきたい」と意気込み、島内での生産拡大と島外への出荷を目指す。他にはない独特の風味を持つ島民のソウルフード、クシティで町おこしにつなげたいとしている。

 

町は12月のクシティの日に合わせ、「クシティ川柳」を募集したり、クシティを使った料理教室を開いたりした。2010年に策定した「長期営農計画」には、自給率の向上と島外出荷を図る作物の一つにクシティを盛り込んだ。現在は自家栽培の規模にとどまっているクシティの生産拡大をどう図るか模索中だ。

 

与那国産のクシティは、他の地域のものより香りと苦味が強い。交易のあった台湾から持ち込まれたといわれている。軽く水洗いしたクシティにツナを乗せ、しょうゆをかけて食するのが与那国流だ。生で食べることが多いため、無農薬が基本。旬の12〜3月には、家庭や給食、居酒屋などの定番メニューとなる。島民にとって冬に味わう“ソウルフード”となっている。

 

パクチーブームに伴い、全国からクシティを求めて島を訪れる人が増えているという。パクチー専門店・パクチーハウス東京の牛田うっしぃ店長(47)は「最初食べたときに塩気を感じた。他と比べて風味も違う。パクチー好きこそ島に行って食べてほしい」と太鼓判を押す。同町産業振興課の田島政之さん(46)は「波が岸壁にぶつかり、しぶきが立つことを『黒潮のシャワー』という。潮風が影響しているのかも」と話す。

 

大宜見稔さん(62)はクシティにほれ込み、種を保存しながら、40年間にわたり栽培している。「自分の子どものように育てないと育たない」。種を譲ったこともあるが、島外で育てたものは与那国産と香りや味が異なるという。「島ものは島の香りがする。島で作らないと味が変わる」と話した。(下地美夏子)

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