3回、クリストファー・ロサレス(手前)の強打を受ける比嘉大吾=15日、横浜アリーナ(大城直也撮影)
前日計量で体重超過のため世界ボクシング評議会(WBC)フライ級王座を剥奪された前王者、比嘉大吾(22)=浦添市出身、宮古工業高出、白井・具志堅スポーツ=は15日、神奈川県横浜市の横浜アリーナで王座獲得を目指すクリストファー・ロサレス(23)=ニカラグア=と12回戦を行い、9回1分14秒TKOで敗れ、プロ初黒星を喫した。セコンドが棄権を申し入れ、試合が止められると、会場はどよめきに包まれた。具志堅用高会長は試合後、17日に表彰式が予定されている比嘉と自身の県民栄誉賞について「もらってもおかしいと思う」と神妙な面持ちで語った。比嘉は16戦連続KO勝利の日本新記録が懸かっていたが、減量失敗の影響か、本来のパワーあふれる連打は見られず、単発に終わる場面が多かった。比嘉は16戦15勝(15KO)1敗、新王者のロサレスは30戦27勝(18KO)3敗となった。県出身で白井・具志堅スポーツに所属する小田翔夢(19)=南部農林高出=は、136ポンド(61・6キロ)6回戦の契約試合でロルダン・アルデア(24)=フィリピン=に3―0で判定勝ちした。
▽WBC世界フライ級タイトルマッチ12回戦
クリストファー・ロサレス(ニカラグア)50・5キロ
TKO 9回1分14秒
比嘉 大吾(白井・具志堅スポーツ)51・7キロ
(ロサレスは新王者)
【評】比嘉は反応が遅く、受け身になって手数、有効打で劣った。左を軸にボディー攻撃でロサレスの動きを鈍らせたが、本来の勢いある連打は影を潜めた。中盤の打ち合いでも活路を見いだせず、防戦一方となった9回に陣営が棄権を申し入れてTKO負けした。ロサレスは序盤から積極的で、左右のアッパーなど長い腕を器用に使って比嘉の動きを封じた。
◇ ◇ ◇
序盤から精彩を欠いた攻撃に「KOキング」の面影はなかった。打ち込んだ直後に倍の返しを受け、劣勢を覆せない。最後はセコンドから試合を止められ、突然の幕切れ。会場に広がるため息が、減量失敗という世界王者にあってはならない失態がもたらした代償の大きさを物語った。
15日早朝の再計量で信頼回復のチャンスをつかんだ比嘉大吾。リングに立つ姿にファンも勝利をあきらめていなかった。それは試合開始前の会場に指笛と大吾コールが響いたことからも明らかだった。「大吾、沖縄から温かい応援が来ているぞ」。具志堅用高会長の声に、比嘉もうなずいた。
だが、ファンの期待には応えられなかった。本来のスピードと豪腕ぶりは鳴りを潜め、挑戦者が繰り出す左のジャブからの連打に苦しめられる。踏み込んで左のフックから右を打ち下ろしても、その直後に左右のアッパーをもらい、反転攻勢のチャンスもピンチに変えられた。
やや強引に超接近戦に持ち込んでも手数で挑戦者に上回られ、距離をとっても中長距離の連打を浴びる。なすすべがない展開に、具志堅会長が試合を止めるしかなかった。
ベルトを失った翌日のプロ初黒星。KO街道を突き進んでいた無敗の王者から「ただの人」へ。ふがいなさに涙しながら比嘉はリングを降りた。「すいませんでした」の声が痛々しかった。(嘉陽拓也)