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2019年のラグビーワールドカップ(W杯)、20年東京五輪・パラリンピックを見据え、県内の商店街で訪日外国人客(インバウンド)の取り込みに向けた動きがじわりと広がっている。消費の低迷が続く一方、インバウンド需要は増加の一途。県が事業費の2分の1以内を補助する制度を新設したことも追い風に、外国人受けを狙った企画や多言語パンフレットの作成など、にぎわいの呼び水にしようと知恵を絞っている。

 

今年2月、川崎市の「チネチッタ通り商店街振興組合」が催したのは振り袖姿で街を歩くイベントだ。川崎大師の節分会に合わせて企画し、参詣後には同商店街の会員店舗で日本酒の利き酒会を行った。参加した外国人女性は酒造りや味の説明に熱心に耳を傾けながら、「エクセレント」「日本人に慣れた気持ち」と杯を乾かしていった。

 

「7月には浴衣で同様の企画を予定しているが、応募が殺到して定員を拡大した」。同組合の井上慶一専務理事はほおを緩める。

 

同商店街では各飲食店が日本語のほか、7カ国語対応のメニューを作成するなど、他に先駆けて受け入れ態勢の整備を進めている。JR川崎駅からほど近い繁華街の一角。人波は絶えないが、先細りへの懸念は払拭(ふっしょく)できないという。

 

同市全体では人口増が続くものの、足元の川崎区や、隣接する幸区ではこれまで消費を支えてきた60代以上の人口が減少傾向にある。「人口の層が変わってきており、日本人だけではどうしても限界がある。外国の方に頼らざるを得なくなるのではないか」と井上専務理事。危機感を募らせるのは同商店街ばかりでない。

 

16年度に県が350の商店街を対象に行った実態調査では、景況感について「やや悪い」との回答が35・7%、「悪い」が22・3%を占めた。環境別でも、駅前や繁華街に立地する商店街でさえ「良い」、「やや良い」と答えたのは合わせて12・1%と停滞感は顕著。その一方、県内を訪れる外国人客は右肩上がりだ。17年には前年比13万人増の244万人を記録している。

 

こうした情勢を受け、県も外国人観光客を活性化の起爆剤にと狙う。昨年度に創設した「県商店街魅力アップ事業」の助成対象をインバウンド事業に取り組む商店街にも拡大。全32件の採択のうち、インバウンドで12件が手を挙げた。

 

国際観光地・箱根を後背地に持つ小田原市でも取り組みは加速する。本年度、外国人向けのホームページ作成で採択を受けた「小田原駅前東通り商店街」は、地元の人たちが集う“夜の街”のイメージを払拭しようと知恵を絞る。発光ダイオード(LED)ライトの設置や、多言語表記の案内板、英語でのアナウンス-。いちげんの外国人客でも立ち寄りやすい雰囲気をつくろうと躍起だ。

 

「取り組みを始めたこの1、2年で外国人のお客さんが店に入るようになった。着実に変化している」と栗田康宏会長。周辺の商店街にも取り組みは広がっており、「手探りの状態だが、危機感を持って協力していきたい」。衰退が叫ばれる中心市街地の活性化につなげたい考えだ。

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