画像を見る

 

沖縄の音楽シーンでひそかに話題となっているDX×DX(デラックス・デラックス)というバンドをご存じだろうか。“デラデラ”の愛称で親しまれる彼女たちは、デラックス(豪華な、贅沢な意)の名前に負けない規格外のビジュアルと、確かな演奏力でロック調にアレンジした昭和歌謡曲を聴かせる一目見たら忘れることはできないインパクト大バンドだ。

 

音楽活動の傍ら、自身の活動拠点となるバー「DX×BOX」を那覇市首里にオープンさせるなど、音楽の枠を超えた活動も見せて注目を集めている。平成生まれの彼女たちが昭和歌謡にこだわる理由、そして「新しい文化を作っていきたい」と語る言葉の真意とは。

 

◇聞き手・野添侑麻(イベンター)

 

メンバーにSP2人? 異色のバンド構成

 

―まずはメンバー紹介とバンド紹介をお願いします。

 

アサガオDX×DX(デラックス・デラックス)でボーカルを担当しています、輝夜朝蛾王(かぐや あさがお)と申します。

 

ツバキ 椿大納言(つばき だいなごん)です。ギターを担当しています。

 

スズラン 蜂乃寺鈴蘭(はちのじ すずらん)。ベース担当です。

 

サクラ ドラム担当の道頓堀桜(どうとんぼり さくら)です。

 

アサガオ そして、SPとして私たちを守っている獅蛇(しだ)と羅獅(らし)といいます。あ、彼ら仕事中はしゃべらないように調教しているので、私から紹介させてもらいました。

 

サクラ 私たちは「歌謡曲カバー・パフォーマンスバンド」として活動しています。主な活動内容は、県内外でのライブとFM那覇さんでのラジオ番組。そして最近メンバーでお店を出してバーも始めました。メンバー全員の総体重が470キロで、現在暫定ですが「日本一重たいガールズバンド」となっています。世界一重たいバンドの総体重が500キロらしいので、あと30kg増えたら世界一重たいバンドになりますね!

 

―そんな記録まであるんですね!(笑)。それではDX×DXの結成に至った経緯を教えてください。

 

アサガオ 留学から帰ってきた鈴蘭ちゃんが音楽をやりたくなって、バーのママをしながら音楽活動をしていた私と大納言さんを誘ってDX×DXを組むことになったんです。3人で活動をしていくうちに私たちのライブ映像がいろんな動画サイトにあがって、ニコニコ動画※1の生主※2として活動していた桜ちゃんがメンバーになりたいと連絡をくれて、この4人体制となりました。そして私たちはか弱い女の子ですので、屈強な身体を持ったセキュリティさんが必要だということで、SP2人がついて24時間守ってくれることになったんです。

 

―なるほど。公式設定のご説明ありがとうございます(笑)。それで、実際はどういう経緯で結成することになったんですか?(笑)

 

アサガオ 実際は……(笑)。私がドラァグクイーン※3が好きだったのがきっかけです。女王蜂※4っていうバンドに憧れていて、彼女たちのようなバンドをしてみたいと思ったのが結成の経緯です。でも、いざ女装してみたもののどう見てもマツコ・デラックスみたいな風貌にしかならなくて(笑)。だったらいっそのこと太っているメンバーを集めてバンドしたほうが面白いと思って、このメンバーを誘って活動することになりました。結成したのは2年前ですが、本格的にライブ活動を始めたのは去年からです。

 

サクラ 公式設定とリンクするところもあるのですが、自分も後から加入しているんですよ。

 

ツバキ 元々桜ちゃんはキーボードで参加していたんですが、ドラム担当のメンバーが抜けちゃったので桜ちゃんにドラムを叩いてもらうことになったんです。
歌謡曲の遺伝子を受け継ぐバンドへ

 

―なるほど、そういうことなんですね。話してはいけない設定外のことまで説明いただきありがとうございます!(笑)。ではなぜ、数あるジャンルの中から昭和歌謡を演奏することになったんですか?

 

サクラ 元々メンバー全員歌謡曲が好きだったんですよ。

 

アサガオ 歌謡曲ってたとえ知らない曲でも「これは歌謡曲だ」ってわかるような独特のコード進行があって、そのメロディって私たち日本人が反射的に「懐かしい」って思わせる要素だと思うんです。昭和生まれだけじゃなくて、平成生まれの私たちが聴いても、なぜか懐かしくなっちゃう。そういうノスタルジー溢れる雰囲気を誰もが味わえるジャンルだと思うんです。そういう音楽ができるバンドをやりたいねってことで、歌謡曲1本でやっていくことになりました。

 

初の東京ライブで掴んだチャンス

 

―確かに最近、歌謡曲のようなフレーズを取り入れたバンドも増えてきましたよね。そんなDX×DXの活動の一つひとつを紐解いていきたいと思っています。まず、このバンドの転機となった出来事ってありましたか?

 

アサガオ 去年11月に行った初東京ライブですね。那覇市にあるライブハウスCyber-Boxの店長の保栄茂さんが東京で主催したイベントに誘ってもらったんです。すると、その時にたまたま音楽事務所の方も見に来ていて僕らを気に入ってくれたみたいで。「来月あるイベントに出演してほしいので、もう一度東京に来てほしい」って言ってくれて。すると、まさかの高木ブーさんと六本木で共演するイベントだったんです(笑)。 そして今年3月に沖縄で私たちのワンマンライブディナーショーにも事務所の皆さんは見に来てくれて、その日正式にその音楽事務所に所属することが決まりました。

 

ツバキ そのディナーショーでは、から揚げを10キロ用意してお客さんに振る舞ったんですけど、すぐになくなりました(笑)。絶対残るだろうなーと思っていたんですが完食でした……(笑)。僕らも食べたかった……。

 

スズラン そのから揚げは人気YouTuber「ハイサイ探偵団」の孫六さんが作ってくれたという、なかなかレアなから揚げでした。女の子のこぶし1個分くらいあるようなデカいから揚げを10キロ分作ってくれました(笑)。

 

―結成からとんとん拍子に良い流れに乗っているDX×DX。ここまで周囲の反響があることを想像していましたか?

 

サクラ 全くしていませんでした。元々全員で決めた計画案っていうのはあって、そのプランに則って活動していこうと思った矢先、周りの皆さんの協力もあって自分たちでも驚くほどのスピードでその計画以上のことが進んじゃっています。
首里に”昭和”な雰囲気のバーをOPEN

 

―また先ほどもおっしゃっていましたが、最近バーをオープンさせたとのことですが、なぜバンドでお店を出そうと思ったのでしょうか?

 

ツバキ 元々事務所が借りていた物件だったんですが、なかなか使われていなかったので「何か面白いことができないかな」と思って、私たちが引き継いでバーとしてオープンさせました。話が出てから1か月くらいで急いでオープンさせたので、バタバタでしたが……(笑)。店名はその名も「DX×BOX」と名付けました。

 

―「DX×BOX」のコンセプトってありますか?

 

アサガオ 懐かしさ、ですかね。店内の雰囲気もそうですけど、インテリアでジュークボックスを置いていたり、駄菓子を置いたり、レコードを並べたり。シニア層のお客さんには昭和の雰囲気溢れる懐かしい空間だと感じてもらえると思うんですが、私たち世代は逆に新鮮な印象を受けると思うんです。レコードで音楽を聴いたり、駄菓子をつまみにお酒を飲むなんてなかなか普段の生活では体験できないし、ここにあるもの全てテレビの中の世界みたいに真新しく映ると思うんですよね。 もちろん私たちDX×DXのコンセプトである「歌謡曲」という昭和っぽさをリンクさせてお店を作った部分もあって、このノスタルジーさを若い世代にも体験して楽しめるお店になっていると思います。誰もが懐かしくて落ち着く空間にしていくのがコンセプトです。

 

スズラン ステージもあるので、イベントスペースとしてライブも出来ます。DX×DXと一緒に盛り上げていける空間にできたらいいなと思っています。

 

サクラ このお店の名前「DX×BOX」は、ジュークボックスのBOXからも取っているんですけど、また別の愛称で「デララボ」とも呼ばれています。ラボは研究所っていう意味なんですけど、私たちがいろんなことを試して実験しながら新しいエンターテイメントの形を生み出していける空間にしていきたいという思いを込めています。

 

―オープンから約1か月経ちますが、反応はいかがですか?

 

ツバキ バーになったり、居酒屋みたいな雰囲気になったり、いい感じだと思います(笑)。また僕らのファンの世代から地元のおじさま方まで、幅広い年代の方が遊びに来てくれます。この場所に以前お店を構えていた「首里café 瑠都」の常連さんたちもよく飲みにきてくれるんです。お店が変わっても来てくれたのは、嬉しかったですね。

 

サクラ 今度その「首里café 瑠都」も形を変えて、こども食堂としてこの場所でオープンすることが決まったんです。同じ店舗を使って日中は子ども食堂兼カフェとして瑠都さんが、夜からは僕らがデララボとしてバー営業を行う形になります。

 

―今後デララボを使ったイベントなどの予定はありますか?

 

アサガオ いろいろやっていこうかと思っています。今月末の29日に「Week End華園」っていうイベントがあります。いつもと違うアコースティック編成で演奏して、週末をまったりとした時間で過ごせるようなイベントにする予定です!

 

―自分たちの活動拠点を持てるのは大きいことですよね!先ほどお話にも上がったのですが、DX×DXさんは最近からラジオ番組を始められたとお伺いしました。

 

アサガオ 6月からFM那覇で「デラデラジオ」という番組をはじめさせてもらいました。私とドラムの桜ちゃん、そして事務所社長の矢上パパという3人でおしゃべりしています!バンドの裏話や、イベント秘話などゲストを交えながらおしゃべりしていきます。私たちより社長が前に出てメインパーソナリティになっちゃっているのが気がかりですが……(笑)。番組は土曜の20時から放送しています。番組終了後はYouTubeの方にもアップされます。
バンドの魅力は”愉快、爽快、奇々怪々!”

 

―それでは、メンバーそれぞれが思うこのバンドの魅力を教えてください。

 

スズラン 圧力。これに尽きるかなと。とにかく見た目も重たい(笑)。ビジュアルも音楽も心にズシンとくるバンド。これが私たちの魅力かなと思います。

 

ツバキ 歌謡曲の魅力を発信できるところかな。古い曲なので若い人は知らない方も多いと思うんですが、私たちなりにアレンジを加えて聞きやすくして再発信しているっていうのが、このバンドの強みかなと思います。

 

サクラ 僕らは歌謡曲をバンドサウンドにアレンジしているんですよ。ギターが入っていない曲もアレンジで加えたりして、音楽的な面でも楽しませることができるように頑張っています。原曲と聴き比べて違いを見つけながらライブを見るのもデラデラの楽しみ方の一つかもしれません。

 

アサガオ 非日常感、ですね。普段私たちみたいな女装した人達が、この格好で街を出歩いていることはあまりないと思うんですが……(笑)。でもそれがライブハウスの中となると、パフォーマンスとして成立してエンタメとして楽しめる。僕らはパフォーマンスを重視していて、他のバンドはまずしないような演出も行うのですが、そこも日常では目にすることができない光景を見せることができていると思っています。他のバンドにはできないスケールの大きいことでも、デラデラがやったら馴染むというか面白く映えるというか。そういうバンドになりたいなと思っています。私たちのパフォーマンスをずっとお客さんが楽しめるように、常に真新しさを出し続けていく。私たちのライブに来たら、日常を忘れてバカしている姿を見て楽しんでもらう。そういう楽しさを与えられるバンドだと思います。

 

サクラ 愉快・爽快・痛快・奇々怪々……。エンタメ要素の詰まったバンドだと思います(笑)。 私たちは小さなバーから、ライブハウス、街のお祭りまで呼ばれたらどこでもライブしますし、小さい子からおじいちゃん世代まで幅広いお客さんを楽しませることができるバンドだと思っています。またボーカルの朝蛾王(アサガオ)ちゃんは本当に歌がうまくて、スコーンっと抜けていく爽快感があるので、そこもまた魅力かなと。

 

平成生まれに聴いてほしい昭和歌謡曲

 

―いま、デラデラの四人が同じ世代の20代にお勧めしたい歌謡曲をそれぞれ教えてください。

 

アサガオ この一か月くらいずっと好きで聴いているのは、泰葉さんの「フライデーチャイナタウン」って曲をオススメしたいです。

 

スズラン 大好きなのは石井明美さんの「CHA-CHA-CHA」ですね。ライブでもやりたいんですけど、なかなか皆がやってくれない(笑)。いつか演奏したいとたくらんでいる1曲です。

 

ツバキ 私がメンバーの中で一番歌謡曲を愛しているという自負があるんですが、この質問は迷いますね……。個人的に大好きなのは山下達郎さんなんだけど、歌謡曲ならではの懐かしさを感じたいなら松崎しげるさんかな。代表曲は「愛のメモリー」なんですが、オススメしたいのは「ワンダフル・モーメント」っていう曲。大人の色気があるバラードになっていて、たまらないんですよね。

 

サクラ 小林明子さんの「恋に落ちて」ですね。この曲って純愛のラブソングに聞こえるんですが、実は不倫の曲なんですよ。<土曜の夜と 日曜の貴方がいつも欲しいから>っていう歌詞の裏には「この人の本命になりたい」っていう思いが込められていて。今のご時世、不倫の歌なんて発表しづらい空気感があるけど、80年代は違う愛の形として歌えていた時代だった。そういう時代背景も含めて大好きですね。

 

―SPさんたちは何か好きな歌謡曲はありますか?

 

SP ……。

ツバキ あ、彼らは喋らないように調教していますので!特別に耳打ちしながら何が好きか聞いてみます(笑)。山本リンダさんの「どうにもとまらない」とアン・ルイスさんの「六本木心中」だそうです(笑)。

 

『デラデラ系』というカルチャーに

 

―メンバー全員それぞれ好きな曲が幅広くて、僕も勉強になりました。ありがとうございます。それでは最後の質問になるのですが、今後の目標を教えてください!

 

アサガオ これは結成したときから皆で話していることなんですけど、「DX×DX自体が文化の一部になる」ことが目標です。「デラデラ系」みたいなくくりができると最高ですね。ダンス、バンド、歌に始まり、ファッションやジェンダーレスっていうテーマも持って活動しているので、全て含めて時代のカルチャーの象徴となれるバンドになりたいと思っています。最終的には県指定文化財になりたいです(笑)。

 


 

※1 ニコニコ動画……ドワンゴが提供している動画共有サービス。日本の代表的な動画共有サービスの1つで、多くの用語や文化を生み出した。

※2 生主……生放送主と呼ばれる。ライブストリーミングの動画共有サービスであるニコニコ生放送のユーザー生放送でライブ配信をしている者を指すインターネットスラング。

※3 ドラァグクイーン……男性が女性の姿で行うパフォーマンスの一種。

※4 女王蜂……2009年結成の日本のロックバンド。2011年にデビュー。

 

― Live Info ―

 

『DX×DX acoustic show “Week End 華園”』

日にち:6月29日(金)

場所:DX×BOX(沖縄県那覇市首里鳥堀町1-45)

開場:19時 / 開演:20時

チケット:1,000円(1ドリンク別)

 

『恋のデラ騒ぎ』

日にち:7月7日(土)

場所:GIG昭和(沖縄県那覇市泊3-7-14)

開場:14時半 / 開演:15時

チケット:前売り2,000円 / 当日2,500円(1ドリンク別)

出演:DX×DX、AIR、RISA、オモイトランス、Reptiles、ume、Mellow doux doux

 

― DX×BOX info ―

 

〒903-0805 沖縄県那覇市首里鳥堀町1-45 2階
〔電話〕098-975-7746
〔営業時間〕20:00~27:00(ラストオーダーは26:30)
〔定休日〕毎週火曜

————-

聞き手・野添侑麻(のぞえ・ゆうま)

 

音楽と湯の町別府と川崎フロンターレを愛する92年生。18歳からロックフェス企画制作を始め、今は沖縄にて音楽と関わる日々。大好きなカルチャーを作っている人たちを発信できるきっかけになれるよう日々模索中。沖縄市比屋根出身。

【関連画像】

関連カテゴリー:
関連タグ: