写真・村山 望 画像を見る

 

おしゃれで機能的 赤瓦コースター
伝統の赤瓦を新しいカタチに 新垣瓦工場

 

冷たいドリンクが入ったグラスの水滴をぐんぐん吸い取る赤瓦コースター。開発したのは赤瓦の産地、与那原町にある新垣瓦工場だ。同社は台風や塩害から沖縄の暮らしを守ってきた赤瓦屋根の高い吸収性や速乾性に注目し、建築素材をコースターに変身させた。発売から約14年。デザイン面でも進化を遂げ、さらに注目を集めている。

 

創業1951年。3代にわたり赤瓦を作り続けてきた新垣瓦工場。そんな老舗の瓦製造会社が生み出したのが赤瓦を使ったコースターだ。開発のきっかけは3代目社長の新垣文男さんの息子、拓史さんの発見だった。

 

約15年前、仕事後に工場内で友人たちと酒を飲んでいた拓史さん。水滴でぬれたアイスピッチャーの下に赤瓦を置くと、みるみるうちに水滴を吸い取っていった。「『コースターに使えるんじゃないか!』と盛り上がったようで、その後息子から商品化の提案がありました」と文男さんは振り返る。

 

屋根瓦をコースターにするという今までになかった発想に初めは戸惑った文男さんだったが、当時21歳だった拓史さんの提案に「親としてはうれしく、何とかやってみようかと思った」と父の顔を見せる。

 

赤瓦の特性に着目

 

とはいえ、従来の赤瓦と同じ作り方ではうまくいかない。乾燥する時に湾曲してしまう赤瓦の性質に試行錯誤しながら試作を重ね、約半年後に商品化にこぎつけた。生産体制を効率化するために手押しプレス機も発注。業者と相談しながらオリジナルの機械を作っていった。

 

しかし、今度は販路開拓の壁にぶつかった。「初めは簡単に売れると思ったけど甘かった。こういう商品の売り方を知らなかった」と文男さん。暑い夏の日、商品を詰め込んだ箱を抱えながら父と息子で手分けして空港と国際通りのお店に売り込みに行ったこともあった。それでも、なかなか相手にされなかった。

 

その後、転機が訪れる。与那原商工会が、新商品としてマスコミへのPRに協力してくれたほか、商工会特産品フェア「ありん・くりん市」で優秀賞を受賞。マスコミから取材なども増え、徐々に反響が出始めた。沖縄らしさと実用性を兼ね備えたコースターは観光客を中心に人気を呼んだ。

 

コースターに続いて、アロマプレートも開発。赤瓦の吸収性と発散性という性質からアロマ液を垂らして香りを楽しむことができ、こちらも人気だ。アクセサリーの制作も開始した。

 

土産品の枠を超えて

 

リーマンショックなどによる観光客の減少に伴い、売り上げ減少の危機に直面すると、土産品の枠を超えて世界に通用するコースターを目指し、デザインにも磨きをかけた。「土産品としてとらわれたくない。雑貨として売りたい」との思いがあった。そして織物のレースをコースターで表現した「赤瓦コースターLACE」シリーズが完成。パッケージも一新し、見た目も洗練された。デザインや色のバリエーションも豊富になった。

 

現在はコースターやアロマプレートの製造に専念している新垣瓦工場。沖縄本島に3店舗、石垣に1店舗、そしてタイにも6店舗出店し、合計10店舗に成長した。タイではアロマプレートが外国人観光客に人気を呼んでいる。息子の拓史さんも専務として国外や離島への出張に精を出す。

 

文男さんは「今後は直営店を県内外にさらに多く出したい」と意欲を見せた。与那原町から生まれた赤瓦の新たな魅力を広めていく。

【関連画像】

関連カテゴリー:
関連タグ: