監督・照屋年之さん 主演・奥田瑛二さん 粟国島の一家を描いた話題の映画「洗骨」が、ついに公開!ゴリこと照屋年之監督(右)と主演の奥田瑛二さんに作品に込めた思いを聞いた=那覇市内にて撮影(写真:喜瀨守昭) 画像を見る

 

命のつながり感じる作品

 

「洗骨」とは、土葬か風葬した死者の遺骨を数年後に洗って清め、再度埋葬する風習のこと。かつては沖縄県全域で行われ、現在は粟国島に残っているという。その葬制をテーマに、離れかけていた絆を取り戻す家族の姿を映したのが映画「洗骨」。ガレッジセール・ゴリという芸名ではなく、本名で監督を務めた照屋年之さんと、粟国島の男を演じた奥田瑛二さんに、本作について語ってもらった。

 

「今の時代に残っている風習なんてうそでしょ? 信じられなくてエジプトのミイラの話かと思いました」粟国島の一部の家庭は今でも死者の骨を洗うと聞いた時、照屋監督はそんな風に思ったと振り返る。

 

どうしてそんなつらいことをやるのか…気になって仕方がなかった照屋監督は、洗骨という風習をのめり込むように調べていった。記録映像を見て話を聞くと、故人への感謝を表していると理解できるようになったそうだ。

 

「愛する人の朽ちた姿に対面し、死をしっかりと感じる。本当は見なければいけない現実だと受け止められるようになりました」

 

人間は、死を迎えると体が腐って骨になる生き物のひとつ。家族が亡くなることで生き物の根源に触れ、感謝の気持ちを込めて骨を洗う。宗教や儀式にとらわれない、そのシンプルな行為から「人は亡くなったら終わりじゃない」と感じ、映画撮影の思いを強くした、と語る。

 

奥田さんは洗骨を「自然なままで無駄がない」と表現。

 

「しばらく存在がある状態で魂は天空へ。そして残った骨を洗う役目の生きている者は、自分の心まで浄化される気持ちになると思います。沖縄という島で洗骨されて魂がふわっと空に舞い、天使のように自由にどこでも行けるといいですよね。僕の感覚では理想の儀式ですし、今も続いているのは美しくて感動的です」と力を込める。

 

再現した「洗骨」シーン

 

本作で重要なシーンの一つが、お墓を開き4年前に亡くなったひつぎの中の妻に対面する場面。

 

「死者との再会は試練だけれど、逃げてはいけないその試練の根幹はきれいな物だと思えました。洗骨の方法を映画を見て知ってほしいです」と、穏やかにほほ笑む奥田さん。撮影では、実際の儀式を忠実に再現した。過去に僧侶の役を演じてきた経験から、礼を尽くして妻を見送る「新城信綱(しんじょう・のぶつな)」という男に迷いなくなりきれた、と話す。

 

「奥田さんにこの役をオファーした理由は目!」と明かした照屋監督。「試写会で見た県民に、『奥田さんはウチナーンチュだったの?』って言っていただきました。それくらい役作りがすごいんですよ。最初のシーンは奥田さんと気付かず、年とった新人俳優って思う人も多いんじゃないかな。それくらい奥田瑛二さんじゃないんですよ」と笑う。

 

撮影地・粟国島での完成披露試写会は、大入り満員で大成功。島民とおいしいお酒を酌み交わしてきたという。

 

家族に会いたくなる映画

 

二人に見どころなどを聞くと、次のような返事が戻ってきた。

 

「キャストのバランスが絶妙で、あなたにあげたいプレゼント。ほほ笑みが湧いて涙があって、また笑う連鎖が起きる作品です。心の鏡で自分を見ることができ、女性が命をつなぐんだと教えてくれます。私自身はこの世とあの世で過ごす不思議な体験をし、何度も深呼吸しながら美しい空と海を感じた粟国島に、心も体もほぐされました」(奥田さん)

 

「洗骨という風習を絶やさなかった粟国島の方たちのおかげで、素晴らしい映画が完成しました。撮影前に母を亡くしたので、母へのメッセージも込めて作っています。自分を生んでくれた親、親を生んでくれた祖父母、祖父母を生んだ祖先…。女性の偉大さを知り、愛しい家族に感謝したいと思える映画です」(照屋さん)

 

18日(金)から県内で上映が始まり、2月には全国公開が決まった本作。沖縄発の笑って泣ける温かな家族の物語を、ぜひ鑑賞してほしい。

(饒波貴子)

 

「洗骨」 2018年/日本
監督・脚本:照屋年之 出演:奥田瑛二、筒井道隆、水崎綾女、大島蓉子、坂本あきら、山城智二、鈴木Q太郎 他 配給:ファントム・フィルム

 

公式サイト http://senkotsu-movie.com/

 

◆1月18日(金)からシネマQ、シネマライカム、ミハマ7プレックス、サザンプレックスで上映

 

(2019年1月17日付 週刊レキオ掲載)

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