体長1・6メートル超のハブを退治した大田寛さん(奥)と孫の砂川翔俐さん=9日、浦添市大平 画像を見る

 

愛する孫、ハブから守る―。沖縄県浦添市大平の民家に9日未明、長さ1・6メートル超の大物ハブが姿を現した。この民家に住む大田寛さん(63)がハブにかまれながらも反撃し、見事に退治。深夜の“大捕物”は孫の入学式を前に繰り広げられた。大田さんは救急車で病院に搬送されたが、幸い軽傷で済んだ。入学式を終えた孫に安全という名のすてきな“入学祝い”をプレゼントすることができた。

 

ハブが大田さん宅の玄関先に出現したのは午前3時ごろ。静まり返った深夜、つないでいた犬がほえだす。明朝に孫の砂川翔俐(しょうり)さん(6)の入学式を控えていた大田さんは、犬を静かにさせようと懐中電灯を片手に外に出た。辺りを照らしていると不意に右足首に違和感が走った。

 

周辺ではこの1カ月ほど、ハブの目撃情報が相次いでいた。「何か当たった感じがした」。かまれたとは思わなかったが、足元には大きなハブが牙をむいていた。「ここで逃がしたらやっかいになる。遊びに来る孫たちのためにも逃がさない」。意を決した大田さんは長さ約30センチの枝切りばさみを持って追い掛けた。

 

一度は逃げ出したハブが反転し、向かってきたところを迎え撃ち、はさみで胴体部分に致命傷を与えた。撃退後、救急車で搬送された大田さん。幸い傷も浅く、毒が体内に回らずに軽傷だった。「朝起きて見たら見事なハブさ、マギーグヮー。よその家に出たなら逃げる」と振り返った。

 

「入学祝いだよ」。9日お昼前、入学式を終えて駆け付けた翔俐さんに、大田さんは誇らしげにハブを見せた。翔俐さんはおっかなびっくりにハブを眺めながら「おいしくなさそう」と顔をしかめたが、「おじいちゃんが大好き。小学校ではたくさん友だちをつくって、強い男になりたい」と一風変わった“入学祝い”を贈ってくれた大田さんに力強く誓った。
(高辻浩之)

 

シーズン到来、注意を

県内各地で気温が上昇する中、暖かくなると行動が活発になるハブの目撃情報や咬症被害が相次いでいる。本紙には今週に入り那覇市、南風原町、本島中部から目撃情報が入り始めており、ハブに気をつけなければならないシーズンを迎えている。県は例年5月1日からハブ咬症注意報を出していて、今後はさらなる注意が必要となりそうだ。

 

県内では年間100人前後のハブ咬症患者が出ている。対策の推進でハブ咬症による死者は減少しているが、後遺症に悩まされるという。県は例年5月1日~6月30日の間、ハブ咬症注意報を発令しており、今年も同期間に出すことを4月1日にホームページに掲載している。

 

注意報では、草刈りやネズミ駆除などを行いハブが生息しにくい環境づくりや田畑、山野、草地などへの出入りや夜間の歩行に注意するよう呼び掛けており、被害に遭った場合は早急に医療機関で治療を受けるよう促している。ハブに詳しい県衛生環境研究所の寺田考紀主任研究員は「既に活発な時期に入ってきている。これからが多くなるかもしれない」と指摘した。

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