木箱に入れた島豆腐を持つ平田永佶さん(右)とゆし豆腐を持つ初江さん=23日、豊見城市高安の平田豆腐店 画像を見る

 

創業48年。夫婦二人三脚でやってきた。地域と共に歩んできた。豊見城市高安にある平田豆腐店が26日、48年の歴史に幕を閉じる。寡黙な平田永佶(えいきち)さん(86)と明るくおしゃべりな妻の初江さん(83)は「寂しいね」とぽつり。「大好きな仕事」の最後の日が迫る中、永佶さんは「いつも通りやるだけ」、初江さんは「ありがとうの気持ちです」と目を潤ませながら語った。

 

豆腐屋の朝は早い。2人は朝4時に起床し、お茶を飲みながら新聞を読む。5時すぎからその日の豆腐作りが始まる。

 

永佶さんは直径1メートル10センチの大鍋や機械を、初江さんは25キロの大豆を洗う。豆すり機で大豆をすったあと40分ほど炊く。にがりや塩を入れる味付けは初江さんの役目だ。永佶さんは豆腐を重しで固める力仕事が担当だ。1日でおよそ島豆腐50丁とゆし豆腐80袋を作る。出来上がった「平田豆腐」は1日3回、永佶さんが市内のスーパーや個人商店などへ配達する。

 

豆腐作りは2人のあうんの呼吸。これまでの夫婦生活でけんかはほとんどない。「けんかしたら豆腐の味が落ちるからね」と2人は笑う。

 

これまでの2人の人生、米統治下、日本復帰といったいくつもの歴史をくぐってきた。苦しい時もあった。それでも互いに支え合い、お客さんの存在に元気づけられた。

 

人だけではなく道具にも感謝。年季の入った風呂敷、木箱、鍋、どの道具も機械もいとおしい。

 

だが、視力や体力の衰えには逆らえなかった。子どもや孫から勇退を勧められた。孫の宜保真紀子さん(23)は「お疲れさま」と2人をねぎらった。

 

2人とも豆腐屋に「未練はある」。それでも永佶さんは26日で「きっぱり辞める」と断言。初江さんは「諦めがつかない。始めるのも大変だけど辞めるのも大変だね」と名残惜しそうに語る。

 

閉店後は2人でゆっくり過ごす予定だ。永佶さんは「朝ゆっくり起きて一日中眠りたい」としみじみと語った。
(照屋大哲)

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