9月定例会最終本会議で答弁する山川仁市長(左)=25日、豊見城市議会 画像を見る

 

【豊見城】市税とふるさと納税の一部や市民や企業からの寄付を財源に、切れ目のない子育て支援を実施することが目的の「こども未来基金」の条例案が25日、豊見城市議会(大城吉徳議長)9月定例会最終本会議で賛成少数(賛成7、反対14)で否決された。子どもの貧困問題が全県的な課題となる中、議会内で足並みがそろわず条例は先送りとなった。少数与党の市議会で、山川仁市長は難しいかじ取りに直面している。

 

可決されれば、基金を活用し給食費の段階的無償化や障がい児の保育受け入れ支援、医療費助成の拡充などを実施予定だった。

 

野党は予算の分かりづらさや同日、市長らが「最終調整」に応じなかったことなどを理由に反対。採決前の反対討論で大田正樹議員(保和会)は「ふるさと納税を基金としていて、基金から基金への二重計上に思える。本来見える化(可視化)しなければならない予算が複雑になり、市民にとって分かりづらい」と述べた。

 

新垣繁人議員(ZERO)と徳元次人議員(保和会)は「市長は大事な議案を採決する日にもかかわらず、会議を理由に最終調整に応じない。議会軽視だ」と市側の対応を批判した。

 

一方、与党は賛成討論で「イデオロギーを超えて早急にこども未来基金を制定し、市民の要望に応える必要がある」と真栄里保議員(共産党)や伊敷光寿(まこと)議員(真新会)らが訴えた。

 

傍聴席では約20人の市民らが採決を見守り、条例案が否決されると「市民の声を反映させろ」「市民を冒瀆(ぼうとく)している」と厳しい声が飛んだ。

 

同条例案は「子ども改革」を掲げる山川市長が「一丁目一番地」と最優先政策に位置付ける。市議会3月定例会で初めて提案されたが、教育民生常任委員会で継続審議となっていた。

 

山川市長は議会終了後「否決は残念の極み。切れ目のない子育て施策を望む市民のことを考えると心痛な思いだ」とコメント。同条例案の再提案については「まずは市民の声を聞いて検討していきたい」と述べた。

 

採決後、ある野党議員は「朝までは賛成の予定だったが市長が最終調整に応じず反対になった」と話し、同条例案への賛意をにじませた。だが、継続審議案件は議会閉会中でも各委員が求めれば担当部署の職員を含め審議することができる。傍聴席からは「なぜ採決直前になって最終調整しようとするのか。今まで何をしていたのか」と疑問視する声もあった。

 

山川市政は少数与党で苦しい議会運営が続く。12月定例会で同条例案を再提案するのか、市民は注目している。
(照屋大哲)

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