不動産の「同意書」について動画で訴えたタスクさん=21日、北谷町美浜 画像を見る

自身の性を特定の性別に限定しない「Xジェンダー」と自認する、本島中部在住のタスクさん(26)は、念願の1人暮らしのために見つけた賃貸物件の同意書に書かれた「LGBTの方は原則お断り」の文字を見て絶句した。

 

不動産業者の担当者は「怖がるから」と説明した。タスクさんは「人と人が愛し合い手をつないでいる。それの何が怖いんだろう?」と語る。

 

事実を伝える動画をインスタグラムにアップすると、タレントのりゅうちぇるさんらがシェア。47万回超も再生され、共感が広がった。

 

タスクさんは幼い頃からいわゆる「女の子の遊び」が好きだった。からかわれたこともあったが、きょうだいら家族はありのままのタスクさんを受け入れた。

 

カミングアウトしたのは大学生の頃。沖縄キリスト教学院大学に進み、親しい友人に打ち明け、地元の同級生や家族にも自らの性について話した。「いいじゃん」「伝えてくれてありがとう」。みな温かい言葉を掛けてくれた。

 

旅が好きで、大学卒業後にバックパッカーをするなどして19カ国を訪問し、多様な価値観に触れた。

 

部屋探しを始めたのは今年から。新型コロナウイルスの影響で海外に行けなくなり実家で暮らしていたところ、1人暮らしをしようと考えた。12月上旬、北谷町で気に入った物件に巡り合った。契約しようと担当者に話すと「LGBTの方は原則お断り」などと書かれた同意書を提示された。理由を聞くと「男性同士のカップルが手をつないでいたら住人が怖がる」と返してきた。

 

絶句した。混乱し、怒りの感情が湧き上がった。沖縄は日本の中でも多様性にあふれ、特に北谷町は観光客や外国人も多く、寛容な土地柄だと思っていたため、ショックは大きかった。担当者に自身の性自認については説明しなかった。「LGBTの当事者だと伝えなければこのアパートに住める」。そう頭をよぎったが「自分の心に正直に生きたい」と考えた。部屋を出て車に乗り込むと、同意書を破り捨てた。

 

「なぜ多様な愛は受け入れられないのだろう」「より良い未来にしたい。そのために現状を知ってほしい」。周囲の人々の愛に支えられ、自分らしく生きてきたタスクさん。インスタグラムの動画では、不動産業者の会社名を伏せながら、自らの気持ちを明らかにした。同じ経験をする人がいなくなることを願い、受け手に思いを託した。

 

(仲村良太)

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