県内で新型コロナウイルスの新規感染者数が100人を超える日が続く。17日には過去最多の167人に上った。長期化するコロナ対応で「各病院はガス欠寸前の状態。きょうあす、医療崩壊してもおかしくない」。浦添総合病院の救急集中治療部医長で、人工心肺装置「ECMO(エクモ)」の臨床試験が豊富な医師らで組織する「エクモネット」の岩永航医師(38)が17日までに取材に応じ、人手不足を抱えながらコロナ重症患者の治療に当たる医療現場の現状を訴えた。(吉田早希)
「飛び込みの重症患者が増えてきている印象だ」。浦添総合病院には、14、15日の連日、重症者の受け入れが続いた。県は人工呼吸器やエクモが必要な患者を重症者と判断している。県内では、浦添総合病院を含む計4施設で重症者を受け入れている。県内の重症者数は17日時点で11人。
人工呼吸器やエクモを使用する際は医療スタッフが24時間体制でモニタリングを行う。エクモ治療は患者1人にスタッフ8~9人で対応し、治療には平均で20日程度を要する。昨年度には70日間治療を続けた事例もあった。人工呼吸器を着けた患者1人にスタッフ5~6人が対応するなど、重症患者の治療にはマンパワーが必要となる。
一方、医療現場のスタッフは疲労が重なり、毎月看護師の離職が相次いでいるという。同院には現在5台のエクモがあるが、人手が足りないことから「対応できる患者は1人だ」と説明する。
岩永医師は「どこの現場も逼迫(ひっぱく)していて、全力で長期マラソンをしているよう。今の波を乗り越えるためには、少しでも余力をつくらないと最大瞬間風速に耐え切れない」と危機感を示す。コロナ病棟だけでなく一般病棟にもしわ寄せが来ているとし、「急性期の現場から看護師が減っており、残ったメンバーは使命感で現場に当たっている状況だ」と窮状を訴える。
同院は、昨年から一般病棟を縮小し、コロナの重症患者治療にスタッフを充ててきた。
コロナ患者の増加に伴い、非コロナを含めた重症患者の受け入れに注力するため、16日からは救急外来の診療制限を開始した。一般外来も同日から通院者の一部をオンライン診療に切り替えるなど縮小しながらも対応を継続する。
岩永医師は、医療の緊急事態宣言と重症患者を受け入れる県内4施設への看護師派遣の必要性を指摘する。「各施設から1、2人でもいい。県がリーダーシップを取って、集中治療のスキルがある看護師派遣を要請するなどの対応が必要だ。今ある資源をうまく分配する仕組みが早急に求められている」と強調した。