夏の東京五輪・パラリンピックの開催が近づく中、事前合宿で各国を受け入れる県内の自治体が新型コロナウイルス禍で見通せない先行きに気をもんでいる。12カ国の選手団が県内11市町村に滞在予定だが、調整は思うように進んでいない。感染防止対策も求められ、期待していた交流イベントは制限を余儀なくされている。
12カ国のうち、最初に沖縄入りを予定しているのはソロモン諸島の競泳選手ら(2人)だ。6月23日から約3週間、八重瀬町で事前合宿を計画するが、県内でコロナの感染が拡大し雲行きが怪しくなっている。
「感染状況によっては東京に直行する選択肢もある」。町の担当者によると、今月初めにソロモン側からこう打診された。県内の感染状況を伝えたが、1週間以上返答がない。「判断に迷っていると思う。来るかどうかなんとも言えない」(担当者)
7月9日からのハンガリーの空手選手団(8人)の受け入れに備える豊見城市の担当者も、コロナがもたらした思わぬ展開にやきもきしている。五輪の出場権を争う大会の中止が続き、選手の出場がまだ確定していないためだ。担当者は「出場権を得ることになれば、来ていただけると思う」と語り、期待と不安を交錯させる。
糸満市はパラ陸上に出場するトルコの選手ら13人の滞在を控える。だが、担当者によると連絡が取れておらず「すぐ対応できる体制は整えているが、来るか来ないか分からない状況」だという。
各国の選手は県内各地に分散するため、感染予防対策は不可欠だ。
医療関係者からはワクチン接種が途中段階での受け入れに、感染リスクを懸念する声がある。県は選手団への検査を徹底するほか、移動時の航空機内で一般客との間に空席を確保し、宿泊ホテルでの食事会場借り上げなどの対策を検討している。
受け入れ市町村が期待してきた交流イベントは、想定通りに実施できなくなった。昨年11月に政府が示した指針では、事前合宿時の交流は選手と接触しない形に限定。ラグビー強豪国のニュージーランドを受け入れ予定の読谷村では、子どもたちが交流する「ラグビークリニック」を検討していたが、オンラインを含めた代替案を探る。担当者は「貴重な機会なので、何か形になるものが残せたら」と話している。
石垣市はルクセンブルクとサンマリノ、竹富町はサンマリノの選手団の受け入れに向け調整してきたが、相手先との合意には至っていない。 (當山幸都)