地域素材を使った商品開発
自然豊かなやんばるで、地域の特産品を生かしたチョコレート作りとカカオの栽培に取り組んでいる「OKINAWA CACAO(オキナワカカオ)」。代表取締役の川合径さん(43)は、カカオで地域づくりをするため、2016年に沖縄にやってきた。現在は輸入したカカオと地元の素材を組み合わせたチョコレートを製造。5年前に種を植えたカカオは、今年初めて収穫にこぎ着けた。
カカオの事業を通して地域づくりを仕事にしたいと、大宜味村田嘉里に移住した千葉県出身の川合径さん。2016年に「オキナワカカオ」を設立し、地域の特産品を使ったチョコレート作りとカカオ栽培に挑んだ。
川合さんは半導体商社の営業に7年間従事した後、起業家育成などを行う企業で8年間国内外を回った。そのうちに自らも「地域づくりを仕事にしたいと思った」。選んだのは「沖縄」と「カカオ」。沖縄でカカオを生産し、地元の素材と組み合わせて商品化することに可能性を感じた。「チョコレートは皆が好きなもので、楽しみ方もいろいろ。それを原材料からすべてトレーサビリティー(生産履歴)を明確にして伝えていくことで、この地域の魅力を伝える一つの手段になる」と考えた。カカオ栽培もチョコレート作りも未経験だったが、専門家の協力を得つつ、独学で始めた。
周りからは無理だと言われた沖縄でのカカオ栽培。カカオの産地は熱帯雨林で「カカオベルト(カカオの栽培地域)は、南北緯20度。沖縄は北緯26度で、圧倒的に冬が寒い」という。それでも大学時代、農学部に在籍していた川合さんは「果樹は生き残っていけば実を付けるもの。時間さえあれば実は付くはず」という信念の下、挑戦を始めた。
大宜味村田嘉里で一反(約990平方メートル)弱の畑を借りることができ、2016年にビニールハウスと露地に2000鉢分以上の種をまいた。無農薬で栽培し、虫被害や強風、冬の寒さなどの問題に直面するたびに、自ら考え、対策を講じていった。
栽培から製造まで
3~4年かかるというカカオの収穫を待つ間、輸入したカカオで商品開発に取り組んだ。地域の生産者たちとの交流も生まれ、カラキ(沖縄シナモン)やシークヮーサー、やんばる酒造の泡盛「まるた」、月桃などの特産品を使った板チョコの他、シークヮーサーピールのチョコレートなど、やんばるの恵みを使ったオリジナル商品を取りそろえる。国頭村浜にある店舗・工房では、カカオ豆からチョコレートになるまで一貫して手掛ける「Bean to Bar(ビーン・トゥ・バー)」製法を導入。カカオ豆の焙煎から、粉砕、成型まで長い工程を経てチョコレートを製造している。今後まとまった量のカカオが収穫できれば、すべて県産素材のチョコレート作りが可能になりそうだ。
カカオの実 収穫が実現
2000鉢分以上植えたカカオのうち、ビニールハウス内で育つ約200鉢が生き残った。昨年実がなり始め、今年1月末に初収穫。収穫期となる今月は、約60個のカカオを収穫した。川合さんは「実が付くのがゴールではない。今後、収穫した実を発酵させて、どうできるのかを試していかないと」と新たな挑戦に目を向ける。
「事業を成長させるというよりは、いかに継続させていくかが大事。続けていけば必ず成長する。時間をかけて実をつけてくれたカカオと同様にゆっくり、しっかり成長していきたい」と話す川合さん。カカオを通して次世代に継ぐ仕事などを生み出し、持続可能な地域づくりを目指しているという。今後も沖縄発のチョコレートで地域の魅力を伝えていく。
(坂本永通子)
OKINAWA CACAO FACTORY & STAND
場所:国頭村浜521
営業時間:11:00~18:00
定休日:火曜
HP:https://okinawacacao.com/
(2021年5月20日付 週刊レキオ掲載)