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「高安の大関昇進をいちばん喜んでいるのはお母さんでしょう。高安が角界入りしたばかりの十代の頃は、本当にいろいろありましたからね」

 

新大関の高安(27)を少年時代から知る、地元の茨城県土浦市の商店主はこう語る。夏場所で好成績を収め、初土俵から12年めでの大関昇進を決めた高安。その暮らしぶりは意外に質素だ。

 

「東京都江戸川区東小岩の住宅街にある田子ノ浦部屋。3年前に新築され、1階に稽古場の土俵があって、2階が大部屋力士たちの住まいになっています。3階は親方の自宅なんですが、いまも2階に高安は住んでいます」

 

2階の大部屋は30畳ほどの広さだという。

 

「最近まで若い衆は4人だけだったのが、稀勢の里が横綱になって、スポーツ刈りの中卒と高卒の新弟子が急に4人くらい入門したんですよ。10人近い大男が大部屋で並んで寝ていますが、高安だけは端のほうに少し離れて寝ています。その3メートルほどの距離が、格の違いってことでしょうかね(笑)」(前出・後援会関係者)

 

驚くことに、大関になっても、高安の大部屋での“雑魚寝”生活は変わらないという。先代親方の頃から、部屋に出入りしている相撲関係者が語る。

 

「先代の鳴門親方(元横綱隆の里)は、『母を助けるため、体ひとつで出来る相撲に懸ける』と中卒の15歳で入門してきた高安を、『ヤス、ヤス』と言って溺愛といっていいほど可愛がっていました」

 

ところが、高安が相撲部屋の生活に慣れるまでにはかなりの時間が必要だった。

 

「稽古をすると弱音を吐き、先輩に少し厳しくされるとすぐ部屋から逃げ出す始末。親方の熱心な誘いがあったから鳴戸部屋に入門したのですが、“稽古がきつかったら常磐線1本で実家に帰ることができるから”とも言われていましたよ」(前出・相撲関係者)

 

繰り返された脱走は、入門から2年ほどの間に7回はあったという。

 

「稽古が終わった直後、靴も履かずに、裸足のまま、当時部屋があった千葉県の松戸の町を歩いていたこともありました」

 

脱走が止まらない高安。しかし身長180センチで“ゴムまり”のような柔軟な体を持つ高安の将来性を信じていた親方は、“秘策”を考えた。獅子の子を谷底に突き落とす思いで、愛弟子にこう言い放ったという。

 

「罰として、ヤスは横綱になるまで大部屋だ!」

 

それでも、また部屋から逃げ出してしまう高安なのだったが……。自宅に逃げて帰ると、母親のビビリタさん(56)が手料理を作ってくれた。高安の近所の住人が語る。

 

「そんなときママは晃くんの大好物のティラピアという魚の料理を作って食べさせるんだと話していました。ビビリタさんの母国フィリピンの家庭料理で、揚げたティラピアを赤唐がらし入りの酢醤油やスイートチリソースをつけて食べるらしいです。『あの子は、これで心の底から元気が湧いてくるのよ』と言っていましたね」

 

高安にとって、ティラピア料理は、もう一度部屋に戻る勇気をくれた“家庭の味”なのだろう。家族に心配をかけた高安には、いま“大きな夢”があるという。

 

「まずは土浦でいちばん大きな家を両親にプレゼントしたいそうです。そして、一生懸命頑張って出世したら、フィリピンで暮らす母の親族全員を日本に呼んで、浦安のディズニーランドに招待するつもりのようです」(前出・後援会関係者)

 

高安を、入門初期から支援してきた別の後援会関係者が言う。

 

「もう一つの夢は力士の究極の夢である、横綱昇進です。彼は家族のために強くなって出世するという思いがとても強い。横綱昇進がかなえば、収入も一気に増えますから、家をプレゼントする夢もすぐにかなうでしょう。それに、先代親方の“言いつけ”のとおり、大部屋から引っ越して独立することができます」

 

家族の支えを力にして、快進撃を続ける高安の夢が叶う日も、そう遠い日のことではないだろう。

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