「優勝は大したことない」同級生父を感嘆させた羽生結弦父の哲学
画像を見る 体育座りをするくりっとした幼少期の羽生(写真:毎日新聞社/アフロ)

 

■羽生の父親の言葉にハッとさせられた

 

このアイスショーの直後、坂田さんは現在まで続く「羽生結弦君を応援する会」を立ち上げている。羽生の父親に連絡をとり許可を得て発足したこの会では、坂田さんがつくった「羽NEWS(ハニューズ)」という会報を会員に配る。

 

現在では、92号にまで達しているというこの会報の内容は、羽生の話題だけでなく、宮城の情報も届けるもの。

 

「結弦くんに会ったときに、私も何かできないかな、何かしなきゃいけないな、と感じたんです。当時、私は仕事のために金沢と仙台を行ったり来たりしていました。平和な金沢から、車で東北に向かうとき、福島に入るともう全然雰囲気が変わるんです。自分だけ金沢でふつうに暮らしていて、でも仙台に来たら大変で。心が痛むわけです。

 

そんなときに結弦くんに会って。“あっ”と思いついて。結弦くんも応援できるし、結弦くんを応援することで宮城のために何かできるんじゃないかと思ったんです」

 

そのように羽生の活躍を見守ってきたなかで、坂田さんは羽生の父親の一言にハッとさせられたことがあったという。羽生が高校生のころある大会で優勝し、坂田さんが羽生の父親に「優勝おめでとうございます」と祝福の電話を入れたときのことだ。

 

「“結弦だけじゃなくて、選手たちはみんな頑張っていますから。家族にとっては、優勝したことが偉いんじゃなくって、頑張ったことが素晴らしいんです。優勝自体は大したことじゃないんですよ”ってことを、お父さんがおっしゃったんです。私は浮かれていた自分が、すごく恥ずかしくて。その言葉に水をかけていただいたなって思っています。ああ、応援するということはこういうことなんだなって、そのお父さんの一言で悟りました。

 

結弦くん自身もいつも本当に大会全体をよく見ていて、いろんな選手やメディアの方への気配りなんかがすごいですよね。みんな頑張っていて、1位になる選手がいるということは2位や3位の選手もいる。大会ができるということ自体、スタッフの方がいてのことだし、自分中心に考えていてはだめなんだ、と考えられていることがよくわかります」

 

長く羽生には会っていないというが、本人をはじめ羽生家の幸せを願っている、と坂田さんは言う。

 

「餃子を送ったのも、お互い震災を経験して大変だったけれど、“裕熙もこうやって頑張ってるから、結弦くんも頑張ってね”というメッセージのようなつもりでした。ご家族も本当に温かい方なので、丁寧に遠征先のお土産を送ってお返しをくださったりしたんですが、私は会うのもご迷惑だろうと思っていて、ただ見守る、といいますか。

 

とにかく、結弦くんの活躍もそうなんだけれど、いずれ彼も引退するでしょうしその後の人生も、それにご家族も、みなさんが幸せになれるようにと思っています」

 

先日、日本スケート連盟の公式YouTubeチャンネルで羽生は今季の抱負を次のように語った。

 

「いつもご支援いただき、ありがとうございます。今シーズンも自分の夢の達成に向けて、日々精進していきます。これからもよろしくお願いいたします」

 

現在、誰も成功させたことのない4回転アクセルを目標に掲げている羽生。北京五輪シーズンとあって、私たちはついつい五輪3連覇を期待してしまうが、“勝利よりも大切なもの”を目指して、羽生は今日も精進しているのだろう。

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