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9月18日、東京・国立競技場で行われた、J1リーグFC東京×京都サンガF.C.戦で、日本のサッカーに新たな歴史が刻まれた。

 

試合開始前、5万994人の大観衆の視線はフィールド中央に集中。

 

両軍の選手ではなく、センターサークルから5mほど離れて直立する、ライムグリーンのユニホームに身を包んだ女性に、だった。

 

ロングヘアを後ろで束ね、唇を結んでキリリと表情を引き締めた彼女は、山下良美さん(36)。

 

女性初のプロフェッショナルレフェリーで、この日J1史上初の女性主審を務めたパイオニアだ。

 

日本で初めてサッカー全国大会が開催された1921年の天皇杯 全日本サッカー選手権以後、男子の主要大会には長らく男性の審判しかいなかった。

 

そんななか女子の国内リーグや国際戦で主審の経験を積んできた山下さんは、’19年の男子の国際戦AFCカップで女性初の主審に選ばれた。

 

’21年5月にJ3、そしてこの日、ついに男子のトップリーグであるJ1公式戦の笛を吹いたのだ。

 

「J1のフィールドに立てたことを大変光栄に、うれしく思います。今後も1試合、1試合、真摯に向き合っていきたいです」

 

熱い視線が彼女に集中したのには、もうひとつ理由があった。11月20日開幕のFIFA(国際サッカー連盟)ワールドカップ・カタール大会に、女性初の主審として選ばれた3人のひとりに、彼女が決定したからである。

 

じつは山下さんはもともと選手だった。日本代表や、なでしこリーグなどの出場経験はなく、審判に転向した過去がある。

 

選手でトップに立てなかったが、最高峰の大会で笛を吹く、世界で初めての女性になるのだ。

 

JFA審判委員会・副委員長の山岸佐知子さん(49)は、ワールドカップで主審を務めるための必須の条件をこう解説する。

 

「選手としてのサッカー経験をベースに、トップ選手の動きに遅れないスピード、フィジカル維持のための鍛錬がつねに必要です。

 

クレームにひるまない芯の強さに瞬時の判断力、さらにその場の空気を読む力まで求められます」

 

試合が荒れれば、特に海外では乱闘や暴動、ときに死者が出る大事故につながることさえある。

 

それほど激しい競技の世界大会で初となる女性主審に、なぜ彼女が選ばれたのだろうかーー。

 

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