■五輪ではラッキーボーイが活躍すればメダルの可能性が高くなる
パリ五輪がいよいよ7月27日に開幕。バレーボール協会は、バックアップ体制を整えている。
「まず、時差調整のため、早めに現地に入ってもらうのですが、大会側が押さえている体育館は時間に制限があるので、それとは別に練習場所を確保しています。あと、同行スタッフのホテルの手配も一苦労。男女2チームとなると人数も多いし、ホテル代も高い。五輪出場は本当にうれしいのですが、費用がすごくかかるので心配です(笑)。でも、海外に行って急にスタッフが減ると、選手は心細いものだというのは、自分も経験してわかっているので、協会としてはお金をかけるところはきちんとかけて、選手たちを支えたいと思っています」
オリンピック前哨戦のネーションズリーグで銀メダルを獲得した日本男子。この勢いに乗って、パリ五輪では52年ぶりのメダルに挑むが、川合が注目しているのは、ラッキーボーイの誕生だ。
「大きな大会で好成績を挙げるときには、必ずラッキーボーイが出てくるんですよ。たとえば、甲斐優斗。あまり試合に出ていないので、他国のチームにデータを取られていない。彼あたりが大活躍すると、メダルを取る可能性が高くなるはず」
自身もラッキーボーイで、ロスとソウル、2度のオリンピック出場経験を持つからこその実感だ。
いっぽう、先のネーションズリーグで、同じく銀メダルを獲得した女子日本代表。オリンピックでは、全員で守り、全員で攻める全員バレーで世界と戦うために、選手のけがだけが心配だという。
「1つのチャンスで上に行ける力を持っているので、盤石のコンディションで五輪を迎えてほしい」
最後に、これからの日本バレーの発展についてどのように考えているのかを聞いた。
「日本のバレーをもっと強く、また、日本でバレーボールをもっと盛んにしたい。そのためには収益を増やさなきゃいけないんです。そこで、バレーボールをやっている小中学生の登録制度を導入し、加盟料をいただく。それを財源として、各都道府県のバレーボール協会の運営体制を整える。これを’27年までに完了させたいと思っています。各県の協会を法人化すれば、スポンサーをつけることもできます。収入を得れば、いい指導者を呼べる、選手も育つ。バレーボールの裾野が広がると思うんですよね」
そして、国内リーグも新たな動きを見せている。これまでVリーグとしてV1からV3まで3部制だったが、今年10月から新たなトップリーグ「SVリーグ」が発足。同リーグは、世界最高水準のプロリーグになることを目指している。
「野球はメジャーリーグがあるし、バスケットボールもNBAがある。サッカーだって、イングランドやスペインのリーグがある。でも、バレーボールは、日本に世界最高水準のリーグを作るチャンスがあるスポーツなんです。
世界のトップリーグになれば、日本人選手は日本でプレーしたくなる、そして、海外の優秀な選手も日本にやってくる。そうすると、国内リーグは面白くなって、バレーボールをやる子供が増える。次世代の有望選手発掘のためにも、国内リーグを世界最高峰のリーグに育ててほしいですね」
日本バレーボール界が生んだ最強ラッキーボーイは、195cmmの高みから、明るい未来を見渡している。
(取材・文:服部広子)
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