(写真・神奈川新聞社)
8日午後5時。開店と同時に、小さい子ども連れの母親たちが、続々とやって来た。
横浜中華街・広東会館(横浜市中区山下町)向かいの中華料理店。定休日の水曜夜は「キッズレストラン笑福」となる。客は、子どもと付き添いの大人のみ。料金は、食べた人が決めて募金箱に入れていく。払わなくても構わない。
この日のメイン料理はマーボー豆腐。デザートにドーナツも付いた。限定50食が約1時間で“完売”。後から来た客に、スタッフが繰り返し謝っていた。
同店が始まったのは昨年7月。子どもの貧困問題がクローズアップされ、「子ども食堂」が各地に登場する中、中華街の関係者らが自分たちにできることはないか、と集結した。
11人の発起人のほか、横浜中華街「街づくり」団体連合協議会(林兼正会長)など、多くの人や企業・団体が賛同。コメや野菜など食材の寄付を申し出る人が次々に現れた。貧困のイメージを払拭(ふっしょく)し、子どもたちが気軽に入れるようにするにはどうしたらいいか検討した結果、現在のスタイルとなった。当初月1回だったが、好評につき昨年9月から月2回とした。
場所を提供する中華料理店も全面協力。笑福の開店日は休みを返上、シェフが腕を振るい、従業員が接客に当たる。他に、ボランティアで手伝いたいと名乗り出る人たちも出てきた。
「本格的な中華料理が味わえる。中華街が一体となって運営しているのが笑福の特徴」。関係者の一人は力を込める。
一方で、オープンから半年が経過、課題も見えてきた。本当に食事を必要としている子どもたちに提供できているのかという点だ。最近は、子どもだけで来店するケースがほとんどないという。
関係者は打ち明ける。「子育ての悩みやストレスを抱えるお母さんが子どもと一緒に来て、少しでも癒やされるのであれば(笑福を)やる意義は十分にある。しかし、もしかしたら、子ども一人では入りにくい雰囲気になっているかもしれない。だとすれば、今後、運営の方法を考えなくてはならない」
おなかいっぱいになった子どもたちの多くの笑顔を見るために-。中華街関係者の模索は続く。
営業は第2・第4水曜の午後5~7時(限定50食)。問い合わせは、笑福・電話045(663)0079。