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(写真・神奈川新聞社)

 

「映画ファンが主催、運営している映画祭。正直な感じがして、受賞はとてもうれしいです」

 

33歳のとき、相米慎二監督「台風クラブ」で第7回ヨコハマ映画祭、助演男優賞を受賞。2016年の赤堀雅秋監督「葛城事件」では、主役の葛城清を演じ、今年の同映画祭で主演男優賞に輝いた。

 

前回は、デビューして13年、初めて受賞した演技賞だった。「賞とはまったく縁のない俳優だと思って生きてきたので、演技を評価されたことはとてもうれしかったです。そこから、がんばろうと思った記憶があります」

 

「葛城事件」で演じた清は、抑圧的な性格で、思い込みの激しい暴君。妻と息子2人の家庭を「偏った愛情」で支配する。映画は、家族の崩壊を描く。

 

赤堀監督から「ぜひ清役に」とオファーがあった。「僕がこの脚本を人ごとじゃないと思ったように、監督もこいつ清く正しく美しくじゃないだろうと思ったのでは」と笑う。

 

自身と対極の役柄だったが、「自分の身にも起こり得る話」と役に没入した。「自分にも息子が2人いる。どこかでボタンの掛け違いがあると、家族ってこうなるんじゃないか」

 

芸歴46年。おごることは一切ない。「ベテランも若い子もみんな同じ土俵。芝居って、うまい下手は全然関係ない。年齢に関係なく、どうしたらいいか、みんな迷っています」

 

映画の主題となった父と子の関係は「永遠のテーマ」だ。自身の父親は戦中を生き抜き、苦労した世代である。「大学に行かないと駄目になるぞ」。そんな父親に反抗する時期もあったが、「自分が社会に出ると、父親の背景が見えてきて、そう言わざるを得ない気持ちも分かるようになった」。

 

「今、息子は31歳と32歳ですけど、面と向かって(人生について)話したことは1、2回しかないですね」。自身も、たった一人で芸能界に飛び込み、自分の信じる道をひたすら歩んできた。

 

映画を見た長男が、冗談めかして「うちのパパはあんなじゃない」と言ったそう。息子のことを話す笑顔に、父の深い愛情が見えた。

 

■お気に入り

陶芸が趣味。「20年くらい前に父親と一緒に始めたんですが、父親は途中でやめてしまい、自分がはまりました」。田舎の土地を購入し、工房と窯を造ったという本格派。奥さまとは、映画を見る趣味が共通という。「映画はよく一緒に見に行っているけれど、本格的な趣味は夫婦別の方がいいですよ」とアドバイス。「自分の時間も大切だから」と笑う。夫婦円満の秘訣(ひけつ)かもしれない。

 

■みうら・ともかず

俳優、1952年生まれ、山梨県出身。74年「伊豆の踊子」で映画デビュー。以後、映画・テレビドラマ・CMで幅広く活躍。85年の映画「台風クラブ」で、第7回ヨコハマ映画祭(86年2月開催)の助演男優賞を受賞。2016年の映画「葛城事件」で、第38回ヨコハマ映画祭(17年2月開催)の主演男優賞を受賞。

 

■記者の一言

映画祭の当日、控室で三浦さんにインタビューした。廊下で取材の順番を待っていると、扉越しに三浦さんの姿が見えた。映画コラムニストの服部宏記者と二人で、「かっこいい」と思わず顔を見合わせた。三浦さんは、背筋の伸びた黒のスーツ姿。これぞスターという圧巻の渋さだった。

 

三浦さんの奥さまは、言わずと知れた山口百恵さん。夫婦円満の秘訣について尋ねると、「そんなものがあったら誰も離婚しませんよ」と苦笑い。愚問だったとあせったが、「最初は好きで、相手の氷山の一角しか見ないで結婚するわけだから、その下の大きいところを見て違うと思ったら別れるしかない。偶然、良かったと思えば、ずっと一緒にいられるでしょうね」。氷山の一角。三浦さんの鋭い例えに感動した。

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