「香港・美肌の知恵」第3回 香港マダムの秘密兵器・その1
挑戦してみたい! 美肌ドリンク&スープ
香港マダムは昔から私たちの憧れの存在です。仕事をお持ちの方も多く、バリバリと忙しい毎日を過ごしているのに、お肌はツヤツヤ。香港マダムが常に美をキープできているのは一体、何故?
1年の大半を半袖で過ごせる香港では、水分がお肌にも身体にもとっても大事。水やお茶、果物を使ったドリンク、スープなど、いろんな形で、こまめに水分をとります。
今回、美しくなる「ドリンク&スープ」を教えてくれるのは、家が老舗の乾物店「恒興行」という、料理研究家メーシー・リウさん(年齢は秘密。40代半ば、だそうです)。3人のお子さんをもつお母さんでもあります。メーシーさんも、しっとり、ツヤツヤ、内側から輝くお肌の持ち主です。
メーシー・リウさん
年齢は40代半ば。アメリカの大学でホテル業を学ぶ。20代の時、実家が「恒興行」である夫に嫁ぎ、家業を手伝い始める。2009年、店で扱う乾物を使ったレシピをまとめた料理本「Mom’s Kitchen」を出版。
「日本は大好き。何度も旅行で行っています。日本人は冷たい水をよく飲むし、いろんなドリンクがありますね。でも、冷たい飲み物は内臓の動きを悪くし、早く老ける原因になります。美肌になりたいなら、冷たいものはダメ。1年中、温かいお湯を飲んでください」とメーシーさん。
意外なところに老化の原因が! ノンカロリーでも油断できません。
今回、メーシーさんは、美肌ドリンク2つと、スープ2つを教えてくださいました。
メーシーさん秘伝の美容ドリンクは、なんと・・・
一つめのドリンクは、「菊と黒砂糖のお茶」。
貧血の人はぜひ。黒砂糖入りの菊の花茶なので飲みやすい。
菊の花は、疲れ目や充血に効果的。体内の余分な熱をとるので、夏に飲むにはぴったり。
黒砂糖は鉄分豊富。身体を温めるだけでなく、補血にもなります。
作り方は簡単。ポットに菊の花と熱湯を入れて、黒砂糖を加えるだけ。これなら毎日でも作れますね。
メーシーさんが使う「胎菊」は、花が咲く前に摘んだ蕾。香りが柔らかなので、菊の香りが苦手な人にも、おすすめ。
そして愛用は沖縄の黒砂糖。石垣産の塩もお気に入り。
「料理にはいつも、沖縄の黒砂糖や塩を使います。素材や調味料は、ナチュラルで、上質なものを使って下さいね」とメーシーさん。油も、ビタミンEが豊富で、アンチエイジングに効くグレープシードオイルがおすすめ。
そして、もう一つのドリンクに入っているものは、特にメーシーさんがお勧めする、香港ならでは(?)の素材、なんと「鹿」です!
え~~? なんて引かないでください。
「鹿筋(鹿のアキレス腱)」と「鹿尾巴(鹿の尻尾)」は、香港のメーシーさんのご実家のお店「恒興行」でも、人気の商品なんです。
アキレス腱は乾燥したもの、鹿の尾は粉末も売っています。
以前、お店の人気商品といえば、燕の巣とフカヒレでした。けれど最近は、手頃な値段で効果バツグンと、鹿のアキレスや尾を買うお客さんが急増中とか。
鹿の尾は、腎臓にいいんですよ。第2回目にも出てきましたが、腎臓はアンチエイジングの要! 手足の冷えや腰痛、疲労にも効きます。
新陳代謝を促し、血流も良くするので、眼の下のクマ、そばかすにも効果的。
そして鹿のアキレス腱は、なんと、88.3%がコラーゲン! 良質なたんぱく質を含み、肌のハリ、そしてみずみずしさを与えてくれます。膝や関節の痛みも改善するので、ヒールの靴をはく人、立ち仕事の人にもおすすめ。
これは、偏見を捨てて、挑戦してみたいものではありませんか!?
ということで、メーシーさんおすすめのドリンク、二つめは「美顔鹿尾巴無花果茶Deer’s tail, chrysanthemum and fig tea (鹿の尾とイチジクのお茶)」。
お通じに良いイチジク、安静効果のある龍眼、菊の花やクコと鹿の尾の粉末をあわせた
「鹿の尾とイチジクのお茶」。
「鹿の尾とイチジクのお茶」の中身。右が鹿の尾の粉末。
お茶40パック+粉末1瓶でHK$540
初心者にもチャレンジしやすい、鹿ドリンク(?)といえましょう。
「恒興行」では、材料をセットにして販売しています。
入っているのは、菊の花、クコ、龍眼、イチジク、そして鹿の尾の粉末。鹿の粉末抜きなら、日本でも手に入りそうな材料です。
作り方も簡単。イチジクを刻み、他の材料と粉をティーポットに入れ、熱湯を注いで、15分おけば出来上がり。
香港では「湯水(スープ)」はとても身近なもの
そして、香港マダムの美肌をつくるのは「スープ」。香港では「湯水(とんそい)」と言います。香港の映画やドラマを見ると、家族や恋人のお見舞いによく自家製スープを持っていくシーンがありますし、香港スターの映画撮影やコンサートのために、スターの奥さんがこんな高価な材料を買ってスープを作りました、という記事が新聞で話題になるくらい、身近なものなんです。
その中でも美肌になる“魔法のスープ”が「老火湯(ろうふぉーとん)」。
「老火湯」は肉、魚、野菜、そして漢方生薬を数時間煮た「飲む薬」。中国でも南方独特の料理です。
それぞれのスープに効用があるので、老火湯は、飲む人の体調を考えてつくります。香港では、女性が男性に作ってあげたい料理、ナンバー1が老火湯とか。
あくまでも料理なので、漢方生薬が入っていても美味です。味を良くするために、肉や魚介もたっぷり入れます。
メーシーさんいわく「アメリカに留学中の息子は、帰ってくるといつもツヤのない顔。でもスープを飲むとすぐに顔色が良くなり、ツヤが戻ります。日本人のお友達も、鹿のアキレス腱のスープを飲んでいたら、目尻の小じわが消えたし、手も若返って、自信が持てるようになったわ、と言ってくれました」とのこと。
おそるべし、スープの威力。
メーシーさんおすすめの、美肌になるスープ、一つめは「薏仁鹿筋湯Deer sinews & Chinese Pearl barley soup(鹿のアキレス腱とハトムギのスープ)」。
鹿のアキレス腱のほか、美白に良いハトムギ、活力が出る乾燥ヤマイモ、にんじんなどを3時間ほど、煮込みます。
アキレス腱のたっぷりコラーゲンで、ひとくちスープを飲むと、口の周りがねっとりするほどの濃厚さ。これは効きそうです。
「鹿のアキレス腱とハトムギのスープ」。飲む時は、エキスが十分に抽出されたスープだけを飲むのが一般的。
二つめは「猴頭茹鮑魚螺頭燉湯Double-boiled abalone with monkey head mushroom and sea conch soup(ヤマブシタケとアワビ、ほら貝のスープ)」。
免疫力を高めるヤマブシタケ、肝臓に良いアワビ、ほら貝は、うまみもたっぷり。
貧血に良いナツメやクコ、コラーゲンたっぷりの魚の浮き袋なども一緒に、これも3時間以上、煮込みます。
「ヤマブシタケとアワビ、ほら貝のスープ」。肌に良いだけでなく、うまみたっぷり。
いかにも効きそうですが、たとえ香港で食材を手に入れても、自分で作れるかどうかは謎・・・。でもどんな味? 効果も実感してみたい・・・。
そんな人に朗報です! メーシーさんのお店で予約注文すれば、ホテルまでデリバリーしてくれるそうです。
香港マダムの魔法のスープ、ぜひ試してみて!
「恒興行」で人気の材料。植物系は私たちにも買いやすい。
①芡實(オニバスの実) HK$46
②桂圓肉(龍眼)HK$76
③杞子(クコ)HK$67
④准山(乾燥ヤマイモ)HK$160
⑤無花果(イチジク) HK$50
⑥胎菊(菊の花の蕾) HK$144
まさに香港らしい「恒興行」の品揃え。こちらは上級者向け?
①猴頭姑(ヤマブシタケ)HK$160
②鹿筋(鹿のアキレス腱)HK$390
③美顔鹿巴無花果茶(「鹿の尾とイチジクのお茶」)のパックに
④別添えの鹿の尾の粉末をプラスして、HK$540
⑤スープにも使う乾燥アワビ
⑥鹿の尻尾(粉末にする前の状態)
*****香港マダムのビューティコラム******
メーシーさんが教えてくれる「美肌のための3つの要素」
「美肌には、食事、運動、心、この3つが大切ですよ」とメーシーさん。いくらお肌に良い食材を食べても、それだけでは、内側から輝くツヤツヤ肌は生まれません。
メーシーさんが心がけているのは――
《食事》
-
揚げ物、冷たいものは食べない
-
外食はしない(悪い素材の料理を食べると、毒素が腸内に溜まり、太るだけでなく、全身に悪い影響がでる)
《運動》
○犬の散歩、山歩きなど、定期的な運動をする
○気功をする。精神安定にもいい
《心》
-
嫌なことはすぐに出して、持ち越さない
-
子どもはとても大切だけれど、自分のことも大切にしてあげる
-
旅行に出かけて、見識を広げる
-
友だちとの交流は欠かさない
-
花を育てる
-
家の中をきれいにする
そしてやっぱり、睡眠は大事! 夜は遅くとも11時までには寝るようにしているそうです。
メーシーさんにとって、料理はストレス発散のひとつ。
「料理が良いのは、集中し、余計なことを考えないところ。レシピを考えるのも楽しいし、上手くできたら、達成感を感じます。人を喜ばせることもできますよ」。
[データ]
恒興行(Hang Hing Company)
住所:上環高陞街19號 19,
Ko Shing Street,Sheung Wan Hong Kong
電話番号852 2548-0153 FAX:852-2858-2749
営業時間:月〜土曜 9:00~18:00
定休日:日曜・祝日、旧正月1週間
今回、紹介してもらった「薏仁鹿筋湯(鹿のアキレス腱とハトムギのスープ)」と「猴頭茹鮑魚螺頭燉湯(ヤマブシタケとアワビ、ほら貝のスープ)」(共に3碗分 HK$300)と、デトックス、疲労回復に良い「土茯苓燉鹿尾巴湯」(3碗分 HK$500)はデリバリー可(デリバリー料無料)。
1日前までに、メールinfo@hanghing1960.com.hkでオーダーを。
ホテル名とホテルの電話番号、部屋番号、チェックイン氏名、配達希望日と時間を明記の上申し込む。支払いはデリバリー時に。
駅の中にあるスープ屋さんで気軽に試してみて!
そして香港へ行った時、気軽に老火湯が味わえるのが、セントラルの駅内にある専門店「チャイニーズ・スプーン」。
美容や健康に良いスープばかり、日替わりで3種類、出しています。ファーストフード感覚で、本格的なスープが飲めるお店です。
時間のかかる老火湯は、家庭でもなかなか作らない(マダムはメイドが作るので、毎日飲めますが)料理なんです。レストランでは万人向きのスープしかおいていないことが多いし。
「チャイニーズ・スプーン」は、老火湯を作るヒマなどないっ、でも美しくなりたいー、という若い女性に人気です。
お客さまは、セントラルで働く女性。そしてトランク片手に、海外出張や旅行の前に飲んでいく女性もちらほら。
メニューを選ぶ時はぜひ、「養顔」という漢字が入ったスープを探してみて。養顔とは、文字通り「顔を養う」という意味。美容に良い、という意味です。
女性に人気があるのは、コラーゲンが豊富な花膠(干した魚の浮き袋)や魚唇(魚のくちびる)、自然な甘みが出る林檎などの果物を使ったスープなど。
え、魚の浮き袋? くちびる? と思う人もいると思いますが、しかし、どちらもコラーゲンたっぷり、香港では人気の美肌食材です。香港マダムもOLさんもせっせと食べていますし、なんといっても美食の街・香港ですから、味は心配ありません。
これからの暑い季節、ドリンク&スープで、香港マダムの美肌を目指してはいかがでしょうか?
「川貝合掌瓜粟米雪耳無花果煲痩肉湯(川貝、ハヤト瓜、トウモロコシ、雪耳、イチジクと豚肉のスープ)」。肺を潤し、美肌に良い雪耳や、同じく肺機能を高める川貝と豚肉、瓜、イチジクなどが入ったスープ。トウモロコシも肺に良く、ヒゲも一緒に入れて煮る。
Sサイズ HK$22
「鮑魚雲腿冬瓜茨實煲走地鶏湯(アワビ、中国ハム、冬瓜、オニバスの実、鶏のスープ)」
体内に溜まった熱をとる冬瓜を使った、夏向きのスープ。コラーゲンたっぷりの魚の浮き袋入り。Sサイズ HK$22
「五指毛桃花生准烏豆煲山班魚湯(五指毛桃、ピーナッツ、黒大豆と魚のスープ)」。髪の毛に良い五指毛桃や黒大豆が入ったスープ。魚(班魚)は栄養があるだけでなく、傷などの治癒力を高める。Sサイズ HK$22
テイクアウトもできるドリンク類。左から「蘋果雪梨特飲(リンゴとナシを煮たジュース)」「五花茶(中国ハーブの甘いお茶)」「羅漢果茶(喉に良い羅漢果のお茶)」。すべて、大HK$15、小HK$10。
[データ]
Chinese Spoon
住所:Level 1,Shop 12B,Hong Kong Station
電話番号:852-2915-2261
営業時間:月〜金 8:00~19:00 土 10:00~18:00
定休日:日・祝日
HP: www.soupcafe.com(ホームページは旧名称The Soup Cafeなっています)
撮影/久米美由紀
文/野村麻里