連続テレビ小説『とと姉ちゃん』の第14週は、「常子、出版社を起業する」。昭和21年2月。長かった戦争が終わり、闇市では食糧や職を求める人々で溢れかえっていた。常子(高畑充希)は、貸本業をしながら甲東出版を維持していたものの、大学出の鞠子(相楽樹)ですら勤める先はなく、君子(木村多江)と美子(杉咲花)は着物の仕立てなどで生計を立てていた。叔父の鉄郎(向井理)は常子に、貸本業みたいなもうけの少ない商売はやめろと言う。常子は、どうしたものかと悩む。だが、その目に飛び込んできたのは、英会話手帖が爆発的に売れている光景だった。皆が娯楽に飢えている。今本を作れば絶対に売れると鉄郎に煽られるも、一人ではと常子はちゅうちょする。

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しかし、谷(山口智充)や五反田(及川光博)が復員し、本格的に雑誌作りを再始動できることに。雑誌作りを再開する常子たちだが、鉄郎に自分で雑誌を作ればもっと儲かると言われてしまう。「お前の稼ぎで一家を養っているんだぞ、もっと金を稼げることを考えろ」と鉄郎。そんな折、綾(阿部純子)が常子を訪ねてくる。聞けば戦争中に夫を亡くし、実家の父親も亡くったという。空襲で実家も焼けてしまったため、今、実母と息子と3人で間借りをして何とか暮らしていると話す綾。「あの頃には想像もしなかった。こんなふうになるなんて」と悲しそうな表情を浮かべる。何もしてやれず、常子は落ち込む。家では、君子が針に糸を通せず苦労する様子を見て、ずっと働かせてすまないと謝る常子。そんな常子を鉄郎は闇市に連れだす。女性でもやりたいことができる時代が来たと説得される。

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綾の元を訪ねる常子。綾の惨めな暮らしを目の当たりにする。常子は、来るべきでなかったと後悔しながらも、綾の子供のために、と新しい木綿の布を差し出す。綾は、一瞬迷ったものの、子供の寝顔に目を落とす。その様子を黙って見つめる常子。綾は、差し出された布を受け取ると、礼を言う。そして、常子と2人だけで話したいと言い、母に席を外すよう頼む。常子が「どうしたの?」と尋ねると、本当は常子に家に来てほしくなかったと本音を漏らす綾子。「こんな惨めな暮らしをしていて、あなたに見られたくなかった」と。そんな綾の辛い気持ちを支えているのは、大切にしまわれた「青鞜」だった。「原始、女性は太陽だった。……あれから10年経つけど、私はまだ月のまま」。それは、女学校時代、藤堂(片桐はいり)から教わった言葉。「私も太陽となって明るさを取り戻したい」という綾の言葉に、常子は一つの決意を固める。それは、戦争が終わっても、日々の生活に困る女性たちのために、手助けとなるような雑誌を作ることだった。文芸を中心に扱う甲東出版でではなく、自分ひとりの力でやってみたいと考え、常子は谷たちに辞職を申し出る。

 

小橋家では、常子が会社を辞めたと聞いて、驚く鞠子と美子。さらに、姉妹3人で雑誌を作ろうと誘う常子に戸惑う。しかし、君子は「私は応援します!」と晴れやかな顔に。たとえ失敗しても戦争よりも辛いことはないと、常子の背中を押す。

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家族の後押しを受け、雑誌を作ることになった常子。おしゃれをテーマに、鞠子に文章を任せ、美子に絵と裁縫の知識を借り、三姉妹で力を合わせて街中の目新しいファッションを取り上げた雑誌作りにとりかかる。鉄郎と共に闇市で紙を探す常子は、粗悪な紙を高値で売り付けられそうなところに、露天商組合で働く水田(伊藤淳史)が偶然助けてくれる。そうして、雑誌は完成へと近づく。水田のおかげで、安い紙を仕入れることが出来た常子たち。

 

一方、常子の雑誌作りを最初に賛成してくれた五反田は、花山伊佐次(唐沢寿明)と会っていた。自分が書いた小説をの挿絵を描いてほしいと花山に頼む五反田。しかし、花山は、もう出版に関わる仕事はしないと断る。すると、五反田は、かつて花山の挿絵を受け取りに行った常子が、自分で出版社を起こすため、甲東出版を辞めたことを話す。花山は、「どうしてそんな話を私に?」と怪訝な顔に。

 

昭和21年7月。鞠子と美子の三姉妹で力を合わせて作った雑誌は、構想から二ヶ月でようやく完成する。『スタアの装ひ』と名付けた雑誌を手に喜ぶ鞠子と美子。だが、常子は、「まだ早い」と言い、まずは雑誌を売って、そのお金でまた雑誌を作るのが目標だと、鞠子たちを鼓舞する。常子は、谷や五反田に『スタアの装ひ』を見てもらうおうと甲東出版を訪ねる。谷は、「服がハレンチでけしからん」とトンチンカンな発言をする。というのも、文芸誌を作ってきた自分たちには、こういう雑誌を作ったことがないので正直、よくわからないという。女性への理解のある五反田さえも、「可愛げあっていい」と一言だけで……。

 

帰宅した常子は、鞠子たちに実績のない自分たちの雑誌は書店に置いてもらえないと説明する。闇市で販売することにした常子たちは、君子も加わり、家族全員で呼びこみを始める。一冊が売れ、また一冊と、『スタアの装ひ』は飛ぶように売れ、日が暮れるころには300部が完売する。これで大金持ちになれるかもしれないと期待が膨らむ常子たち。増刷してさらに売ろうと意気込む常子だったが、中でも鞠子は1千部を目指そうと誰よりも張り切るのだった。

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大成功を収めた常子の雑誌『スタアの装ひ』。増刷をかけ闇市に出かけると、そこには似たような名前の雑誌で溢れかえっていた。焦って売る常子たちだが、類似品よりも値段が高く紙質も悪いため、大量の在庫を抱えることに。落ち込む常子たちに、「諦めないでもう一度出せ」と鉄郎。ひと儲けしようと始めたジーンズの事業に失敗し、京都に行くと荷造りを始める。自分は当分、東京に戻れないが、近所の書店でも買えるような雑誌を作れと言い、小橋家を去る鉄郎。「もう一冊頑張ってみないか?」という常子に鞠子と美子も同意する。常子は、失敗の原因を探るため、谷を訪ねる。だが、やはり女性の雑誌のことはよくわかないと言われ、落胆する常子。すると、五反田からかつて内務省にいた花山(唐沢寿明)に聞いてみたらと助言される。花山は、新聞社で編集長をしていたこともあり、編集者としての才能も素晴らしいという。躊躇する常子に、五反田は花山の住所を渡す。

 

『とと姉ちゃん』第15週(7月11日〜16日)は、「常子、花山の過去を知る」。女性のための雑誌を作りたいと、雑誌作りを始めた常子(高畑充希)たち。ファッションのことを記事にした雑誌「スタアの装ひ」は、最初大当たりしたものの、その後類似品が多発し、多くの売れ残りが出てしまう。失敗の原因を解明するため、常子は花山(唐沢寿明)を訪ねるが、対応は素っ気ない。五反田(及川光博)に聞くと、花山は「二度とペンは握らない」とかたくなに断っているという。常子は何としても花山の才能を自分の雑誌に活かしたいと、花山の働く珈琲屋に向かう…。

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