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人間は、広い世界のほんの一部で生きている。
全てを知ることはできない。
世界のどこかには、自分の知らない何かを熱狂的に愛してる人がいる。研究する人がいる。
そんな人が集まると、小さなブームになる。
誰かの世界を、少しだけ覗いてみちゃおう。
それが「うさこの覗いた世界」なのだ…!

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大阪に地獄がある…。
そんな噂を聞きつけ、わたしは大阪のJR平野駅から歩いて20分ほどの「全興寺」に向かった。

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お寺につくと早速「ウソをつくと舌を抜くぞ」と書かれた物々しい看板が出迎える。
少し怯えながら境内に入ると、小屋が現れた。
これが噂の「地獄堂」だ…。

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入口の横に「極楽度・地獄度チェック」という機械があり、
いささかポップな見た目に反して「このまま生きれば極楽に行けるか地獄行きか」という末恐ろしいテーマをエンマさま自ら判断してくれる。

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この質問がまた厄介で、「感謝して真剣に努力する/絶えず不平不満が多い」や「信念を持ち辛抱強い/人に頼りすぎ、すぐにくじける」といった何とも選びづらい系選択肢ばかりで、
昨今の心理チェックでは「ややそうである」や「どちらでもない」に逃げたがる症候群のわたしにはこの極端な二択しかない診断は非常に心苦しく、
「不平や不満を言うことも少しはあるけど基本的には感謝してるよね…?」
「たまにはわがまま言うけど反省もしてると思う…」と自分に激甘チョイスをしてしまった気がして仕方ない。
エンマさまは「極楽行き 合格」と言ってくれたけど自己採点では「地獄行き執行猶予」くらいです。

さて、自分と向き合うという最初からシビアなビックイベントを迎えたわたしはいざ地獄堂の中へ向かった。

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中央に構えるのはお怒りのエンマさま。
左には死後の判決を下す裁判官たちがずらり…。
なるほどこれが地獄か…思ったほど怖くはないじゃない。
油断したわたしはふと顔を上げた瞬間絶叫!!
地獄堂の真の恐怖がこちらです。

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怖すぎるわ。
その怖さたるや、そばを通ったおばあちゃんが「怖いから入られへん…」と呟いて早足で逃げてしまったほど。

エンマさまの下にあるドラを叩くと、鬼の奥にある小さな液晶からムービー「地獄絵巻」が流れる。
突然語り出すお面…。
ちなみにこちらの地獄絵巻は全興寺ホームページでさわりだけチェックできるが怖すぎて思わずブラウザバックを押してしまうレベル。

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よもや今年二度目の絶叫を我が家で迎えるとは思いませんでした。

お面は、地獄で行われるたくさんの罰について淡々と語った。
「動物をいじめたものは体を刻まれ…
騙したものは釜茹でに…
人の話に耳を貸さないものは火の車に乗せられる…」
泣きそう。
とはいえ、何も人々を怖がらせるための「地獄堂」ではない。
地獄へ行かなくて済むように、人々が日々を振り返り、命を大切に生きてゆけるよう教える場が「地獄堂」。
少し前、しつけに絶大な効果があるとして子育て中のママの間で絵本「地獄」という本が大流行した。
あの本も怖い部分ばかりが先行したが、恐怖で言うことを聞かせるためのものではない。
悪いことをしない、と自ら思うためのものなのだ。
大人でも叫んじゃうくらい本当に怖いけど。

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「地獄堂」があれば「ほとけのくに」もある。

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151体の仏さまに囲まれることができる水音が響く水琴窟の真っ暗な地下空間で、
これもこれで怖いわと思ったが靴を脱いでマンダラの上に座り瞑想してみたら、その静けさの中に落ち着ける場所を見つけたような気がした。
静寂を切り裂いたのは見知らぬおばあちゃん。
突然おばあちゃんは「ろうそくあげるわ!! これ!! 浮かべたらええから!!」と蓮の形をしたかわいいろうそくをわたしに授け、足早に去っていった。

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水の上に浮かべると小さな光が水の上にぽーっと灯って、それがまたとても幻影的だった。

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境内の中におられる涅槃仏は、なんとガラス像でできていてはっきりした姿が見えない。

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それは自分自身のこころの中の仏さまを掘り起こして見るためだそう。
このお寺では何度も自分と向き合わされてしまう。
すごい自分の力が試されているのを感じながら、わたしはマイおしゃかさまを思い浮かべ、
手を合わせたのであった…。

たくさんのお堂だけでなく、境内には昭和が詰まった「小さな駄菓子屋さん博物館」も。

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「おばあちゃんのお部屋」と呼ばれるノスタルジックな部屋を覗くこともできる。

ぜひおじいちゃんおばあちゃんはお孫さんと一緒にこのお寺に訪れ、
地獄堂で恐怖と命の大切さを教えたり、「昔の駄菓子はこうで…」と思い出話を語ってあげたり、
いろんな意味で忘れられない思い出を築いてほしいな…と妄想が膨らむうさこなのであった。
そして子どもも大人も、今一度命の大切さについて考えてみてほしい。
じゃないとエンマさまに舌抜かれちゃうから。

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どうかお願いです。

 

全興寺
大阪市平野区平野本町4-12-21
地獄絵巻のさわりが見れて、極楽度・地獄度チェックもできるサイトはこちら
http://www.senkouji.net/

米原千賀子

ライター兼イラストレーター。へっぽこな見た目とは裏腹にシビれる鋭いツッコミで世の中を分析する。人呼んでうさこ。常に今日の夜ごはんのことを考えている食いしん坊健康オタクな一面も。webマガジンNeoLなどで連載中。

公式サイト http://yonusa.wix.com/4bunno1
ツイッター http://twitter.com/yonusa1

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