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「人の体には、体内時計によって刻まれるさまざまなリズムがありますが、じつはそのリズムのなかには、体調を崩したり、病気や事故が起きやすくなったりするタイミングも組み込まれています。いわば“ブラックタイム”とも呼ばれる厄介な存在です。そして、病気や事故といったそれらのトラブルの発生時期を年単位でとらえるのが、『年内リズム』という考え方なのです」

 

こう語るのは、『「正しい時間の使い方」が、あなたの健康をすべて左右する』(東洋経済新報社)の著者で、石黒クリニック(岐阜県)の石黒源之院長。自らの37年にわたる臨床医としての経験と数多くの研究論文から、1年、1カ月、1週間、そして1日といったサイクルのなかに、特定の疾病や症状を引き起こしやすい危険なタイミングがあることを指摘する。

 

「地球は太陽の周りを1年かけて1周します。そして、太陽の通る角度や昼夜それぞれの長さなどによって、春夏秋冬という4つの季節があるわけです。こうした日本の四季は、世界的にみても夏と冬の温度差が大きく、真夏と真冬の温度差が30〜50度にものぼるという特徴があります。そのため『年内リズム』の振れ幅が増幅してしまい、結果的に体調を崩したり、病気になったりといった現象につながってしまうのです」(石黒院長・以下同)

 

変化の大きい日本の四季こそが、体調不良を引き起こす大きなポイントだということだが、暑い夏が終わり、日ましに肌寒くなってきたこれからの季節は、とりわけ危険だと石黒院長は指摘する。

 

その原因は、秋に入り気温と湿度が一気に低くなることと、それにともなう体温の低下により、免疫力が下がってしまうことだ。免疫力とは、病原菌やウイルスといった外敵の侵入を防ぎ、体内にできた病いのもとになる細胞を取り除く力のこと。いわば生物が本来持っている「自己防衛」の機能だ。免疫力をアップさせるには体温を上げるのが効果的だが、気温が下がる秋冬は体温も下がりやすく、病気にかかりやすくなってしまう。もうひとつの理由は「夏の疲れ=ダメージ」が秋以降にあらわれてくること。

 

「夏の強烈な日差しは、秋冬の健康維持にとって大敵です。紫外線を浴びることによって作られるビタミンDは、カルシウムのバランスを整えて骨を健康にする効果がありますが、浴びすぎてしまうと秋以降に抜け毛やシミなどの原因にもなるのです」

 

近年の異常な天候も、秋冬の健康管理の難しさに拍車をかけている。

 

「夏の終わりごろには、35度を超える猛暑日になったと思ったら、翌日は急に最高気温が10度以上も下がることもあります。こうした『日単位』での激しい気温差も『年内リズム』を助長する要因になります。また今年の夏は、関東から北では雨がよく降り、湿度の高い日が続いたため、ダニの死骸やカビの繁殖が例年よりも多いという報告が出ています。ですから、夏の終わりにじゅうたんやベッドの掃除を念入りにしておかないと、ダニアレルギーの原因物質(ダニアレルゲン)を吸い込みやすく、ぜんそくの症状を起こす可能性があります」

 

「年内リズム」の影響が大きくなるこれからの季節。石黒先生にその対処法を聞いた。

 

【1】ダニ・カビの徹底除去

 

アレルギーのもとになるダニの死骸やカビは、夏の終わりとともにしっかり除去。

 

「エアコンとベッドの下など、掃除は入念に行ったほうがいいですね。とくにベッドの場合は、シーツをまめに洗っても、マットレスまでは干せません。ダニの巣窟になっている可能性もあるので、ひんぱんに掃除をしましょう」

 

【2】とにかく早く寝る

 

疲労を回復させる成長ホルモンが分泌されるのは睡眠中。

 

「睡眠の質が悪かったり、睡眠時間が短かったりすると、この成長ホルモンが十分に分泌されなくなってしまいます。深夜のテレビやスマホは厳禁です」

 

【3】適度な運動を習慣化

 

筋肉量を落とさないことも大切。朝と夕方にそれぞれ30分ぐらいかけて歩いてみよう。目安は2000歩程度。ふだんから歩く習慣をつけておくことで、免疫力もアップさせられるそう。

 

「血圧が異常に高いんです、と血相を変えてくる患者さんには、ゆっくり20〜30分ぐらい散歩してきてもらっているんですが、それだけで数値が20ぐらい下がります。すぐに薬に頼るのではなく、まずは体を動かすことで自然に治療する力を引き出す。そうすることで免疫力の向上にもつながるのです」

 

いずれも地道な対処法だが、健康に近道なし! ということだろうか。

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