『女性自身』が『OL』という言葉を世に送り出して50年。結婚したら家庭に入るのが当たり前の時代に、本誌は職場で道を切り開いてきた女性たちの姿を伝えてきた。時を経てキャリアを積み重ねる女性が増える一方、子育てと仕事の両立など変わらない課題もまだまだ多い。さまざまな場所で職場に立ち続ける“同僚”から、自分の持ち場で奮闘しているあなたへ、世代を超えて送るメッセージーー。

 

「母は専業主婦でした。家庭に閉じ込められ、三歩下がってという母親像を見て育った私は、自分の力で生きたいと願ってきました。母も、『手に職をつけなさい』と、自分でかなえられなかった夢を私に託し、ことあるごとに『薬剤師の免許をとりなさい』と言うのです。ですから、私にとって仕事をするのはあたりまえのことでした」

 

そう話すのは、『素顔のままで』『あすなろ白書』『ロングバケーション』などのヒット作で、脚本家として大成功を収めた北川悦吏子さん(51)。高校まで出身地の岐阜で過ごし、早大進学で上京。卒業後は広告代理店に就職したが、いわゆるブラック企業で、半年で退社。翌年春、にっかつ撮影所に入社した。

 

「そのままいけば、プロデューサーになるはずでしたが、脚本を書いてみたいと上司に相談したんです。上司には『邪魔はしないけど、応援もしない』と言われました」

 

上司の暗黙の了解のもと、にっかつ撮影所が依頼を受けた脚本を北川さんが書くようになり、才能が一気に開花。

 

「在宅勤務で脚本を書いたりもしたので『なんで北川だけ?』と、つるし上げを食いそうになりましたが、上司が守ってくれましたね。よくも悪くも『女だから』と、今の10倍は言われた時代。女子が少ない分、大事にされることもあれば、『女だから』と、仕事から外されたことも。女であることが、ハイリスク、ハイリターンの時代。チャンスもあれば傷つくこともありました」

 

レールが敷かれていた仕事ではない。北川さんは自分の力で、脚本家の道を切り開いてきたのだ。連続ドラマの脚本を手がけた30歳で、にっかつを退社。フリーの脚本家として活躍し始めると同時に、結婚。出産して、仕事と子育てで悩んだ時期もあった。一粒種のお嬢さんももう高校生だ。そんな北川さんから、若い世代へのメッセージがある。

 

「ここ数年、女性に元気がなくなってきたと感じています。ヒットするドラマや映画の女性像が、昔に戻っていて、可憐でかよわくお花のような女性像や内助の功願望が強くなったように思うんです」

 

北川さんも均等法施行に前後して、職場における女性の立場が少しずつ変わっていく過程を肌で感じてきた人だ。

 

「脚本家は自由な世界ですが、男性ばかりだった時代もあります。そのなかで、橋田壽賀子さんが大変な思いをして作家を続けられ、私の前に内館牧子さんが出られ、女性作家がいっせいに増えたのが私たちの時代です。前の世代が頑張って、私たちの世代がつないで、女性の道を作ってきた。はずなのに……。今、若い女性が『結婚して専業主婦になりたい。家に入りたい』と言うのはなんか哀しい。社会参加してほしいし、その力があると思うんです」

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