「8月から、収入に応じて介護保険料の負担が変わる『総報酬割』制度が始まります。この制度が’20年度に全面導入されると、40歳から60歳では、公務員が加入する共済組合の保険料負担は、一人あたり平均1,972円増加し、7,097円に。大企業社員などが加入する健保組合は平均727円増加し、5,852円。中小企業などの協会けんぽは減額に。平均241円減って4,043円になります」
そう語るのは生活経済ジャーナリストの柏木理佳さん。’20年度の全面導入に向け、この8月から、大手企業の会社員は一人あたり月額平均200円以上の負担増になる見通しだ。
「それだけではありません。この8月から、高額療養費制度も変更されます。患者が支払う医療費には、負担が重くなりすぎないように限度額があります。外来の場合、年収が156万円〜約370万円の70歳以上の人の限度額は1万2,000円でした。しかし、8月からは1万4,000円に引き上げられてしまいます。年収が370万円以上あるなら、4万4,400円から5万7,600円に限度額が引き上げに。医療費がかさんでいる人には、金銭的にも精神的にも負担になりそうです」(柏木さん)
社会保険料の値上げが進む理由について、ファイナンシャルプランナーの加藤梨里さんはこう話す。
「’00年4月に始まった介護保険制度ですが、想定より早く高齢化が進み、後期高齢者が爆発的に増えました。医療が発達して寿命が延びた半面、認知症患者などにより、介護が必要な人も増加。脳以外は元気という方も多いので、介護の長期化も深刻です。これらが原因となり、医療と介護の財政が圧迫されています」(加藤さん・以下同)
さらに今年9月には、厚生年金の保険料率も引き上げに!月収30万円の場合、月354円支払い額が増える計算だ。
「年金制度は、’04年の改正で段階的に引き上げていましたが、’17年以降は水準を固定することが決まっていました。国民年金保険料は、今年4月に引き上げられた1万6,490円を最後に、賃金の変動に合わせて来年は逆に“引き下げ”の予定なのですが……」
少子高齢化で財源は厳しく、「保険料負担を増やす」か「受取額を下げる」しか道はない。改正時では、’18年以降は受取額を下げるのみ、ということになっていた。だが、国民年金保険料は、今後も値上がりする可能性があるという。
「昨年末、次世代育成支援のため、20歳以上60歳未満の学生や自営業者、フリーターなど国民年金に加入している人の保険料を、産前産後の期間中は免除とする改正が成立しました。その分の財源を、保険料の値上げでまかなう予定なんです。実施された場合、まず’19年4月から月100円程度上乗せされることになります」
児童手当をより手厚くし、保育や幼児教育を無償にする「こども保険」の創設も検討されている。必要な財源を、年金などの社会保険料に上乗せすることでまかなうプランが進行中だ。
「国民年金保険料を月160円程度、厚生年金保険料を月0.1%ほど引き上げれば、これまでの児童手当の額に5,000円プラスできるようです。さらに値上げ幅を増やして、児童手当を月2万5,000円に引き上げる案もあり、その場合は最終的に国民年金保険料が月830円程度、厚生年金保険料が月0.5%まで引き上げられる試算になっています」
年金の受取額自体も、今年は0.1%減らされている。
「来年4月からは、労働力人口と物価、賃金に応じた年金受取額の調整が厳しくなり、受取額の抑制がさらに厳しくなる可能性が高いです」