「闇活」=「闇の活動」って物騒でまがまがしいイメージを持つかもしれないけど、逆なんです。闇の中で行うことで、心が落ち着き、対人関係を改善する効果もあるとか!
「ストレスがたまる、人間関係がうまくいかない、自分に自信がない……こんな悩みのある人は、目を閉じてみましょう。視覚を遮断して、ほかの感覚が活性化すると自己肯定感が高まり人生が楽になりますよ」
こう話すのは、「四感トレーニング」を開発し、国内だけでなく海外でも広く指導を行う日本マイブレス協会代表理事の倉橋竜哉さん。
「今の時代、テレビやスマホをはじめとした視覚情報があふれ、私たちは視覚に偏った世界に生きています。人間には視覚以外にも、嗅覚、味覚、触覚、聴覚が備わっていますが、視覚ばかりを酷使するあまり、脳や心身に負担がかかり、自律神経の不調やストレスを招いています。昔と比べ、現代人の疲労が大きいのは当然です」
倉橋さんは「視覚から入ってくる情報はその人自身の判断や価値観まで惑わせる」と警鐘をならす。
「たとえば、レストランへ食事に行くとき、ネットで読んだ口コミを参考にお店を決める人は多いでしょう。ですがそうしたとき、本当に自分の感覚でおいしさを判断できているでしょうか。口コミで評価が高かったからおいしいはずだ、というバイアスがかかり、自分の舌でよく味わう前に『おいしい!』と口に出してはいませんか? このように外部の視覚情報を優先し、本来の自分の感性を置き去りにしていくと、実際に何を感じているかわからなくなる。すると自分に自信がなくなり、人に振り回されたり、自己嫌悪に陥りがちになります」
そこで日常的な行為を暗闇で行う“闇活”が、四感をフルに稼働させるには効果的だそう。
「副交感神経のスイッチが入り、瞑想と同様にリラックス効果も得られます」
倉橋さんがすすめる3つの“闇活”のハウツーを聞いた。
【闇風呂】
1)明るい状態で浴室の床に石けんなどが落ちていないか確認する。
2)照明を消して浴室に入り、髪や体を洗ってお湯につかる。強い香りの入浴剤は嗅覚への刺激が強く、ほかの感覚が働きにくくなるので避けたほうがいい。
「明かりを消して湯船につかると、ふだんは意識しないさまざまな感覚に包まれるのがわかるはず。たまった疲れがお湯に溶けていくようなイメージでリラックスし、四感に身を委ねてみましょう」(倉橋さん・以下同)
お湯の温かさ、浴室に満ちた水蒸気、シャンプーのほのかな香り、外から聞こえてくる虫の声……。触覚に集中すれば、お湯の肌触りすら感じられるようになる。
「闇風呂を実践した人からは『長風呂は苦手なのに、気づいたら時間がずいぶんたっていた』という感想をよく聞きます。面白い映画を見ていると2時間でもあっという間に感じられるように、感じることがたくさんあると、時間が進むのが早く感じられるのです」
【闇鍋】
1)1人1品鍋に入れる食材を用意。食材はほかの人には秘密にする。
2)昆布などでだしをとり、大根や白菜などシンプルな具材だけ入れた水炊き鍋を準備。
3)部屋を暗くして、水炊き鍋をそのまま食べる。
4)各自用意した食材を1品ずつ入れ、そのつど、何を入れたかを食べながら「当てっこ」する。
5)食後、ロウソクで部屋を薄明るくし、感想をシェア。
「暗闇の中で、各自持ち寄った食材を鍋に入れ、それが何かを当てあいながら食べて楽しみます。たとえば大根が見えている状態で口に運べば、脳は最初から『大根の味』として受け入れる準備をしてしまいますが、闇鍋では食べ物が見えないので、先入観のない状態で味を楽しむことができます」
「自分は何を食べているんだろう」と探るように味わい、味のほかにも、匂い、舌触り、そしゃく音と、四感すべてを使って食べることになる。
「日常的にテレビやスマホを見ながら食べている人は、一度闇鍋を体験してみて。明るい中の食事でも、それまでよりしっかり味わって食べられるようになり、味覚に自信がつきますよ」
【闇日記】
1)紙とペンを用意し、部屋の電気を消す。夜寝る前がベスト。
2)頭の中に浮かんだことをそのまま紙に書く。
3)書き終わったら、書いた内容は見ずにそのまま寝る。
「明るいと自分の文章が目に入ってくるため、どこか躊躇してしまい、本音を文章に書くのが難しくなります。ところが部屋を暗くし、目を閉じて日記を書くと、そうした心理的なブロックが消え、心の中にたまっていることがスラスラと書けるようになるのです」
モヤモヤしていること、こんなことを言ったら嫌われるんじゃないかと躊躇するようなこと……そんな心のわだかまりを1日の終わりにすべて出してしまうと、安心してぐっすり眠れる効果も。
「闇日記で自分の本音を認められるようになると、日常生活でも言いたいことが言えるようになりストレスが減ります。実践した人からは、わだかまりが消えて人間関係がスムーズになったという声が上がっています」
日記を書くのに使うペンは滑りがいいもの、紙は手触りのいいものを選び、書く感覚を楽しむと本音がより出やすくなる。
「どの“闇活”も、感覚がおざなりになると、義務感ばかりが先立って続かなくなります。正しくやろうとするより、心地よく感じることを重視しましょう」
四感を磨いて自信を取り戻し、ストレスのない人生を送ろう!