いよいよ10月22日には即位の礼を迎える雅子さま。回復が目覚ましく、ご活躍になっていらっしゃるが、これまでなぜ16年間も苦しまなければならなかったのか、そして新皇后に期待されることとは……皇室に詳しい2人の識者が語り合った(司会/皇室ジャーナリスト・近重幸哉さん)。
近重「雅子さまが新皇后となって5カ月が過ぎ、いよいよ10月22日には即位の礼をお迎えになります。『女性の品格』などのエッセイでおなじみ昭和女子大学理事長・総長、坂東眞理子さんと、精神科医で本誌の皇室記事にコメントしている香山リカさんに、雅子さまについて語り合っていただきます。まず、最近の雅子さまのご様子をお2人はどう見ていますか」
坂東「雅子さまは、本当に生き生きと回復されていて、とてもよかったと思っている人が圧倒的に多いと思います」
香山「私は、雅子さまの回復には“助走期間”があったと思うんです。上皇陛下は、退位のご意向が報道される前に、そのお考えをお子さまたちにお伝えしていたことでしょう。それを、ご自分が皇后になることとして、雅子さまが受け入れられた時点で、はっきり気持ちが決まっていらしたことと思います。その助走期間で、ご自分でも計画を立てられてきて、『このころまでには、これをやる』というステップを満足にこなされることができていたのではないでしょうか」
近重「雅子さまが苦しまれているとき、そこには常に天皇陛下が隣にいらして、お心配りをなさってきましたが」
香山「陛下は一貫して、とにかく雅子さまを守り、会見のたびに『雅子も頑張っています』『私も雅子に支えられています』と、かばい続けてこられた。結果的には雅子さまの信頼を得て、登校不安の愛子さまに対してもそうでしたけど、ご家族の回復につながっていきました」
坂東「苦しんでいるパートナーのことを丸ごとお認めになって、受け入れていらっしゃるハズバンドというのはなかなかいません。結婚されるときに『僕が一生お守りします』とおっしゃったのは本当だったのだと、頭が下がる思いです」
近重「新天皇の即位で、秋篠宮さまが皇嗣となられました。現在の皇位継承者は、秋篠宮さまを除くと、83歳の常陸宮さまと悠仁さまだけ。女性天皇を認めるべきかどうかの議論は続いていますが」
香山「女性天皇については、私は肯定的で、けっこうなことだと思います。陛下と雅子さまは、愛子さまの将来について、ストレスをお持ちなのではと思います。愛子さまは成人に近づいているのに、将来天皇になられるのか、そうでないのかを、ご自分の意思で決断できないというのは大変なことですよ」
坂東「日本の歴史を振り返ってみればわかりますが、皇位継承は男系男子に限るというのは、明治政府の下級武士たちの儒教的論理なんです」
香山「国民の感情としても、皇室のお子さまに対しては、ご誕生から皇室の中でお育ちになって、皆知っている方だからこそ、親しみを感じるわけです。『旧宮家の復活』を唱える声もありますが、男系といっても、私たちの知らない方を『皇族として尊敬してください』と言われて、自然な敬愛の気持ちを持てるかどうかということを考えたほうがいいと思います」
近重「これからの令和の時代に、新皇后・雅子さまに期待することは」
坂東「グローバルに活躍されてほしいですね。環境問題や、恵まれない子どもたちの問題など国際的な問題に関わっていかれてほしいですね。できれば英語のスピーチでいろいろ発言できる機会をお持ちになれば、素敵だと思います。天皇陛下がとても大事にされている水の問題のような環境のこととか、雅子さまも子どもの問題や南北間の貧困の問題などにご関心がおありなので、そういうことを大切になさるのは、とてもいいことですね」
香山「ただ、いまのところ大丈夫そうにお見受けしますけど、ちょっと燃え尽き症候群が心配です。本当に公私の区別がない生活だと思うんですね。ご公務はもちろんですけど、個人としての時間も大切だと思います。雅子さまは、『私にいまできることは何だろう』と常に考えていらっしゃるような感じです。逆に心配になってしまいます」
坂東「誰しも皆が順風満帆で生きているわけではないのですから。つらい思いをしても、また回復して元気になることができるというお手本になっていただきたいですね」
香山「そうですね。私は、雅子さまは、現代の同世代の女性のいい意味でのシンボルというだけではなくて、社会の軋轢とか、女性や家族の問題を、ご自身は望んでいらっしゃらなかったにせよ、体現されてきた方で、それを乗り越えられて、自分なりに輝けるのだと、そういうお姿自体が、いろいろな人を励ますのだと思います」