政府は今、「全世代型社会保障」を進めようとしている。これまで高齢者福祉に偏りがちだった社会保障を、子どもや現役世代も含めたすべての年代が満足できるものに変えていこうという。幼児教育の無償化がその一端だが、実は、負担が減ることばかりではない。財源が切迫していることから、逆に、負担増を強いられることも多いのだ。
「今、検討されているのはおもに2つ。1つ目は、一定の所得がある75歳以上の方が、病気などに支払う医療費を現状の1割から2割負担に引き上げること。2つ目は紹介状なしで大病院を受診したとき、今は初診料に最低5,000円が上乗せされますが、この上乗せ額を増やし、対象となる病院も増やすこと。医療費はますます上がっていきそうです」
こう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。そこで、医療費を節約できる方法を2択クイズ形式で荻原さんが出題! 正解はどっち?
【Q1】医療費控除の対象になるのはどっち?
インフルエンザの予防接種 or 初期がんが見つかった人間ドック
正解は、初期がんが見つかった人間ドック。「1年間の医療費が10万円(所得が200万円未満ならその5%)を超えた場合、確定申告をすると税金が安くなり、払いすぎた分が戻ってきます。これを医療費控除といい、病院代だけでなく、薬局で買った薬代なども対象に含まれます。とはいえ、何でもOKではなく、『治療は控除対象だが、予防は対象外』という線引きがあります。したがって、インフルエンザの予防接種は対象外なのです。人間ドックも病気の早期発見を目指して行うもので、治療ではありません。原則は控除の対象外です。しかし、何か病気が見つかって、治療につながった場合に限って、人間ドックの費用も医療費控除の対象になります」(荻原さん・以下同)
【Q2】高額な歯科治療。医療費控除の対象になるのはどっち?
大人の歯列矯正 or インプラント治療
正解は、インプラント治療。「前述のとおり、医療費控除を受けるには、年間の医療費が10万円を超えねばなりません。入院などがなければハードルが高いように感じますが、高額な歯科治療はそれだけで10万円を超えるものも多いです。医療費控除の対象なら、申告しない手はありません。残念ながら、歯列矯正は美容のためとみなされて、医療費控除の対象外です。同じ歯列矯正でも、子どもは成長を阻害しないために行うので、控除対象です。インプラント治療は、一般的に行われる治療と認められ、医療費控除の対象です。医療費控除など払いすぎた税金を取り戻すための申告は5年間有効です。過去5年以内にインプラント治療をして、申告していない方は、領収書を探して、ぜひ申告してください」
【Q3】医療費控除を申告するのはどっちがお得?
一家でいちばん稼いでいる人 or 病気になった本人
正解は、一家でいちばん稼いでいる人。「医療費控除は、家族がかかった医療費を合算して申告できます。このときの家族とは、家計が同じなら、一緒に暮らしているかどうかは関係ありません。たとえば、単身赴任中の夫や下宿先で暮らす子ども、毎月仕送りをしている高齢の親などの医療費も合算できます。家族分をまとめて申告する際、もっとも稼ぎが多く税率の高い人が申告すると、税金の戻りが多くなります。たとえば年間の医療費が14万円かかったとします。10万円を超えた部分、つまり14万円−10万円=4万円が控除されます。このとき、所得税率が10%の人なら4,000円が、20%なら8,000円が戻ってくる計算になるのです。誰が病気をしたかではなく、医療費控除は、家族分もまとめて、税率の高い人が申告しましょう」
新型コロナウイルスの流行は収まる気配もなく、先行きの不透明感が強いなかで、「残念ながら今年も給料は上がらないでしょう」と荻原さんは語る。
「私たちは、医療費を含めた小さな節約を重ねて、家計防衛に努めるしかありません。ほかにも、保険など家計のムダをなくす方法を『保険ぎらい「人生最大の資産リスク」対策』(PHP新書)に詳しく書きました。参考にしてください」
「女性自身」2020年3月10日号 掲載