「皆さん、こんにちは。今日は『スクワットのためのスクワット』というエクササイズです」
真っ白な椅子、真っ白なテーブル、壁も床もカーテンまで真っ白な部屋で、パソコンの画面にほほ笑みかける広瀬眞奈美さん(58)。がん患者やがんサバイバー(がん経験者)のためのリハビリや運動、健康管理などを学べる一般社団法人キャンサーフィットネスの代表理事だ。
昨年12月には、オンラインサロン「Hello!」を立ち上げ、Zoomを使ったリモート指導も開始。毎日12時から10分間のライブ配信と運動教室160本の動画コンテンツを配信している。その日のライブ配信では、広瀬さん自ら、モニター画面の前で、説明しながら体を動かしていた。
「まず、足の裏、意識してほしいです。靴下を脱いでもらって、足の裏をまんべんなくたたいてみてください」
モニター上部には、数人の参加者の顔が並んで映し出されている。皆さん、楽しそうだ。コロナ禍で急増するオンライン・フィットネスのなかでも、がんサバイバーならではの体の状態や特徴に合わせた指導ができるのは、ここだけではないだろうか。
広瀬さんもがんサバイバーだ。08年10月、45歳で乳がんを発症し、左乳房切除術とリンパ節郭清の手術を受けている。
「手術前、いろんな論文を読んで、術後の運動の大切さを知りました。ところが、手術後、整形外科には乳がんのリハビリがなく、一般のスポーツクラブでも入会を断られ、『この痛い体をどうしたらいいんだろう』と、悩みました。その経験が、キャンサーフィットネスと『Hello!』につながったんです。
最近では、『がんサバイバー』という言葉も浸透しつつあり、社会の認識も変わってきてはいます。それでも、がん手術後のリハビリは、いまだに、ほとんど保険適用外。リハビリできる施設は少なく、お金もかかる。そのため術後、患部や体の痛み、不自由さがあっても、緩和、改善できずに、患者は孤独を抱えてしまうことが多いんです」
そんな患者やサバイバーを救いたいと、広瀬さんは運動教室や健康管理講座を開いた。オンラインの「Hello!」では、広瀬さん、専任トレーナー、認定インストラクターが、さまざまな講座を開いている。