最近、息子が目で光を追うようになった――。笑顔で話すシングルマザーの大川絵里奈さん(26)の愛息・陽向(ひなた)くんは3歳。発達に重度の遅れが生じる難病であり、治療法が見つかっていない「ジュベール症候群」と闘っている。
この子は、長く生きられるのだろうか――。未来を案じて、以前は泣いてばかりだった。しかし、その息子の存在が、彼女を強くした。絵里奈さんは病気のことを発信し、多くの人の支えにもなっているのだ。
少しずつでもできることが増えていく陽向に、泣き顔ばかり見せてはいられない!そう意気込む絵里奈さんに、陽向くんとのあゆみを語ってもらった。
絵里奈さんは温泉で有名な群馬県草津町の出身。21歳で長女を出産するも、ある日、夫が「ひとりになりたい」と言い始めたのだ。
「ショックでしたよ。でも、そのころ私、2人目を身ごもっていて。それぞれの親も呼んで話し合いをしたんです」
しかし、結果は離婚することに。小柄な彼女のおなかはもう目立ち始めていた。
その後の7月21日、第2子を出産。体重3千242gの元気な男の子で、絵里奈さんは「陽向」と名づけた。しかし、生後3カ月、4カ月と時間がたつにつれ、絵里奈さんは息子の様子に、違和感を覚える。
「赤ちゃんって生後2カ月ぐらいになると目で物を追うじゃないですか。でも、うちの子はまったくしなくて。まぶしくてまばたきすることもない。眼振もひどく、眼球が揺れるように動いたり。それに、首がぜんぜん据わってくれなくて。グラグラと生まれたての赤ちゃんと変わらない感じで……。だから、東京の国立精神・神経医療研究センターに1週間、2人で、検査入院することに。生後8カ月の陽向が血液、脳波、尿、MRI……、いっぱい検査を受けました」
退院の前日。主治医は「結果を説明しますね」と切り出したものの、どこか言いにくそうにしていた。
「申し上げにくいのですが、お子さんはジュベール症候群だと思われます。珍しい病気で、われわれも数名しか、実際にこの病気の患者さんを診たことがありません……」
それから、主治医は陽向くんに知的、身体的発達の遅れが出ることや腎障害になる可能性、治療法がないこと、いまだ研究中の病気でわからないことが多いことなどを説明し終えた。
重い沈黙が何分間も続いた末、絵里奈さんは、乾いた心を振り絞るようにして、1つだけ質問した。
「この子は長く生きられますか?」