全国でコロナの新規感染者数の爆発的増加が止まらない。引き金となっているのは、変異株がもつ驚異的な感染力だーー。
埼玉医科大学総合医療センター・総合診療内科・感染症科教授の岡秀昭先先生によれば、今回の感染爆発を招いている大きな要因が、これまで国内で広がったウイルスに比べ強い感染力をもつ変異型の「デルタ株」にあるという。
「私たち埼玉医科大学総合医療センターでは、7月に入って初めて『デルタ株』に感染した患者さんが見つかりました。それからものの2週間ほどで、ほぼすべてがデルタ株による感染に置き換わってしまったのです」
岡先生はそう話す。’20年1月、国内で初めて確認された新型コロナウイルスが、中国・武漢から広まった「従来型」だ。
続いて今年の4月以降に拡大した、イギリス由来の変異株が「アルファ株」。感染者1人が何人にうつすかを示す「実効再生産数」が、アルファ株は従来型の1.32倍と、その感染力の強さが指摘された。
そして6月以降、急速なスピードで広まっているのが、インド由来の「デルタ株」だ。
4月に岡先生の患者さんでアルファ株が初めて見つかったときには、従来型から置き換わっていくのに1カ月程度かかったという。それと比較して、デルタ株は倍以上のスピードで置き換わりが進んでいるというのだ。
「私の地域では、現在の新規感染者の9割がデルタ株です。国内でも地域によっては少ないところもあるでしょうが、デルタ株への置き換えの流れはもはや止められないのです。新型コロナウイルスは、より人の体の鍵穴につきやすく、侵入しやすく変異することで感染力が強くなっていくと推測されています。従来型より強力なアルファ株からさらに変異したデルタ株の感染力は、より深刻化していると言えるでしょう」
岡先生が診察したデルタ株による感染者には、いわゆる「3密」回避などの感染対策をすでに行っている人が多いのだという。
「複数人で飲食に出歩くなどの、感染が疑われるような行動が思い当たらないというのです。『不要不急の外出を避け、家にいたのに……』という人も感染している。つまりデルタ株にはどこで感染してもおかしくないのです」
その感染力の強さが今回の感染爆発を招いていることに疑いの余地はなさそうだ。