母でありメダリストの本橋麻里(写真:アフロ) 画像を見る

「18年の平昌五輪後、GM(ゼネラル・マネジャー)に就任しました。でも、ロコのメンバーがイジるんですよ。『GMってグレート・マリの略語かもね~。麻里ちゃん、突拍子もないことするからね~』って、ハハハッ」

 

そう言って本橋麻里(35)が白い歯を見せると、周囲がパーッと明るくなった気がした。

 

かつてカーリング女子日本代表は「カー娘」と呼ばれ、彼女自身は「マリリン」として親しまれた“氷上のアイドル”だった。

 

そして現在の肩書は、社団法人ロコ・ソラーレ(以下ロコ)代表理事兼GM。10年2月、バンクーバー五輪で8位と結果を残せず、同年8月にチーム青森を退団、新チーム「ロコ・ソラーレ」結成を発表した。直訳すれば「地方の太陽」だが、「ロコ」は故郷・常呂町(ところ・北海道北見市)にちなみ「太陽の常呂っ子の意味も含む」と目を輝かせた。

 

「日本カーリングのルーツ、常呂町でイチからチームを作る」

 

発表会見の壇上で意気込む本橋に対して、当時、現在の成功を予測した人がどれだけいただろうか。しかしロコは徐々に頭角を現し、16年の世界選手権で銀メダル獲得、18年2月の平昌五輪で銅メダル獲得と、いずれも日本カーリング史上初の快挙を達成したのだ。

 

平昌ではさらに、試合中にピンマイクが拾う「そだねー」の相づちと、ハーフタイムでフルーツやスイーツを頬張る「もぐもぐタイム」が話題となり、「そだねー」は同年のユーキャン新語・流行語大賞の年間大賞を受賞。そして21年9月、ロコは北海道銀行との北京五輪日本代表決定戦に臨み、2連敗からの3連勝と、大逆転で勝利した。

 

リード・吉田夕梨花(28)
セカンド・鈴木夕湖(ゆうみ・30)
サード・吉田知那美(30)
そしてスキップ・藤澤五月(30)

 

大接戦を制した4人の元にフィフス(控え選手)の石崎琴美(43)と本橋GMが駆け寄る。

 

続く12月の世界最終予選で日本代表として北京五輪出場権を獲得、2大会連続の出場を決めた。いやが上にも金メダルへの期待が高まるところだが、本橋は努めて平静に「望むこと」を口にする。

 

「北京で闘う彼女たちに期待するのはメダルの色ではない。みんなが“氷好きな女のコ”のままで、楽しむ姿を見たいんです」

 

私生活では北見市で知り合った男性と12年5月に結婚し、15年10月に長男(6)、20年1月に次男(2)を出産。現在は第一線から離れているが、チーム運営に手腕を発揮し、家庭では2児の母として奮闘する“働くママ・アスリート”なのである。彼女がいま、チームの結成前夜から振り返り、メンバーたちの素顔を語る。

 

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