「岸田首相や彼の前秘書官が同性婚導入について発言した問題は、日本の新聞やテレビのほか、外国のメディアにも大きく取り上げられました。私はこの発言を聞いたとき、怒りというよりあきれました。率直に申し上げて、歴史のお勉強が足りない人たちなのだと」
そう語るのは美輪明宏さんだ。2月1日の衆議院予算委員会で、同性婚の法制化について問われ、「社会が変わってしまう課題」と答えた岸田文雄首相。3日、岸田首相のこの発言について問われた荒井勝喜首相秘書官は「(同性カップルを)見るのも嫌だ、隣に住むのも嫌だ」「(同性婚を法制化すると)国を捨てる人が出てくる」と差別的な発言をして更迭された。
「同性婚、性的少数カップルが嫌だという偏見は、その人自身が過去の軍国主義の悪い部分だけに振り回されていて、本当の歴史を学んでいないためです。そのような人たちが、日本の政治を動かしているということにあきれてしまったのです。地球上には、古くから同性愛というものがあることをご存じないのですから」
確かに、美輪さんの言うように、古代ギリシャ神話をはじめさまざまな国の神話に、同性愛や両性愛の神々が登場することは珍しくない。またアレキサンダー大王やローマ皇帝のハドリアヌス帝には、同性の恋人がいたと伝えられている。
「日本でも、古くから公家や貴族、武士たちの間でおこなわれていた男色(男性同士の性愛)にまつわる話が史料として残っています。たとえば、戦国時代になると、戦地に女性は連れていけないので、殿様が女性の代わりに小姓(身の回りの世話をする少年)を自分のそばに置きました。
江戸時代の作家、井原西鶴の浮世草子『男色大鑑』という作品には、武家社会のさまざまな男色の話が書かれております。大昔から、日本でも同性愛は当たり前のようにありました。それが今日まで連綿と続いているのです」
しかし、明治維新以降、西洋のキリスト教的な価値観が国内に入ってきたことで、同性愛は異端視されるように。時代が昭和へと移り、太平洋戦争が始まると、軍部によって男同士の恋愛は“国賊”行為とみなされたというーー。