「富裕層といえば、豪邸に住みブランド品で身を固め、高級車を乗り回す……。そんなイメージを持っていましたが、現実はまったく違ったんです」
そう話すのは元東京国税局勤務で『元国税専門官がこっそり教えるあなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)の著者、小林義崇さんだ。小林さんは約10年間相続税の調査を担当し、富裕層の“リアル”をつぶさに見てきたという。
「相続税調査は、故人の職業や収入だけでなく、趣味や交友関係など多方面にわたります。たとえば故人の趣味が投資なら、金融資産が隠されていないか。海外旅行が趣味なら、海外に相続資産がないかなど、趣味などの情報から調査範囲を広げるケースもあり、調査対象は暮らしのすべてに及ぶのです。そこで出会った人たちは、意外に質素な暮らしぶりで服装も普通。ひと目見ただけでは、お金持ちだとわからない人ばかりでした」(小林さん・以下同)
富裕層を1億円超の資産を持つ人とすると、’20年のデータで日本の富裕層は約366万人。全成人のわずか3.5%だ。そして相続税は本人が亡くなっても、家族に遺す多額の財産がある場合にしか課せられない税金である。
「人生の一時期、多額の収入があっても、派手な暮らしを続けていたら資産は遺せないでしょう。相続税調査を受ける億単位の財産を遺す人は、懸命に働きながら、倹約にも努め、地道に資産を蓄えてきた人なのです」
■大企業の社長は意外と財産が残らない
つまり、お金持ちの行動には“貯まる”ヒントが隠されているということ。実際にはどのようなことをしているのだろうか。
「たとえば、税務署に電話しても、必ず『折り返して』と要求して電話代さえケチる人や、家計簿をつけて1円単位の支出を管理する人もいました。 1円たりとも無駄金を使わないからこそ、コツコツ資産を増やし億万長者になれるのでしょう」
さらに、富裕層というと、大企業の社長経験者など派手な職業を思い浮かべるのが普通。しかし実際は“コツコツ働く人”のほうが多いという。
「いわゆる“雇われ社長”は在任期間が短く、リタイア後の収入は年金だけという人も多数。そうなると資産を取り崩して生活するしかなく、相続財産はそれほど遺せません。
それよりも、中小企業の社長や個人事業主など高齢でも働き続けられる職業のほうが、相続財産を遺せるんです。このような人は、年を重ねても収入があり、年金を加えると収入が余ります。つまり、年老いても資産が目減りするどころか、増え続けるんです」
実際は、地域で長年愛されたマッサージ師など“一生現役”を貫いた人が資産家だったということが多いのだそう。年を取っても働くことがお金持ちへの近道だ。
また、富裕層は節税対策に詳しく、マネー知識も豊富だという。
「富裕層に会社勤めの方が少ないのは、事業主のほうが税金の優遇措置を受けやすいことが一因だと思います。自分で事業を行う方は、仕事でも税金やお金に向き合う機会が増えるので、よりお金に関する知識がたまっていく。その結果、無駄な税金を払わずに済み、損を避けることができるんです」
次のページでは、まだまだある富裕層の意外な面を紹介する。でも、理由を知ると「だから億万長者になれたのか」と納得しきりだ。