「これまで激しい物価高のなかでも、米の価格は長年安定していました。2020年の価格を100とした消費者物価指数も、昨年5月ごろまで『米類』は95未満で推移していましたが、昨年後半から急上昇。今年5月の指数は103.9、昨年同月比9.5%増という高騰になっています」(経済部記者)
JAグループなどが卸売業者に販売した米の取引価格も12%上昇。今後も、米の価格は上がっていく見込みだという。その理由を、小池精米店(東京都渋谷区)の3代目店主、小池理雄さんはこう話す。
「需要と供給のバランスが崩れていることが、大きな要因です。昨夏は酷暑だったことに加え、梅雨がなく水不足で、昨年は米の収穫量が減りました。そんななか、コロナ禍が明けたことにより、業務用の需要がアップ。当店でも、レストラン用の売り上げは対前年比で2割近く上がっています」
その背景にあるのが、インバウンド需要の増加だ。
「当店の前を見ても、海外からの観光客の増加を感じます。米の需要増加の一因になっていると言えるのでは」(小池さん、以下同)
■買う場所によって米の価格が異なる
ただ、すべての銘柄の米が高騰しているわけではないという。
「実は高いグレードの米の価格は、影響をあまり受けていません。高騰しているのは、比較的安い価格で売られていたものです」
われわれが日常的に食べているお米ほど値段が上がっているのだ。今後はどうなるのだろうか。
「今より価格が下がることは、しばらくないでしょう。現状のままか、米の需要がさらに上がれば、昨年度収穫した米の在庫がより少なくなることで、より高騰するかもしれません。いずれにせよ、今年の新米が流通するまでは安くなる可能性は低いでしょう」
じつは同じ産地やブランドのお米でも、買う場所によって価格は大きく違う。節約アドバイザーの和田由貴さんはこう語る。
「米はスーパーで買うという人も多いと思います。住宅地の中や駅前といった、立地のいい場所にあるスーパーは便利な半面、売場面積が狭いため、取り扱う米の種類や内容量も少ないことが多い。
それに対し、立地は不便でも、敷地面積が広く、場所をとる米を売るのに適しているのが、郊外に多いホームセンター。米を置くことで、場所をとりコストが増えるスーパーに比べ、場所を気にせず米を置けるため、安く売ることができるんです」
しかし、車がない場合、重たい米をどうやって運べばいいのだろうか。
「最近は、ホームセンターでもネット注文を受け付ける店が増えています。ホームセンターで米以外に買うものを決めて、一緒に注文すれば送料も節約できます。買い物に出向く労力と時間を考えると、車の有無にかかわらず、ネット注文を利用することも一つの手です。
また、一定金額以上の買い物をすると、一定時間無料で車を貸し出してくれるホームセンターもあります。ほかに買い物の予定があれば一緒に買い、車を借りて運ぶという手も」(和田さん、以下同)
和田さんも自家用車は持っていないというが、ほかにもさまざまな選択肢があるそう。
「わが家は『カクヤス(首都圏を中心に展開している酒類小売チェーン)』で米を頼むことがあります。店舗からのお届けの場合、どんな商品でも送料無料ですぐに届けてもらえて、価格もスーパーよりお手ごろで、おススメです」
実質2千円で返礼品が手に入る、ふるさと納税という選択肢も。
「ふるさと納税と言えば品が思い浮かびがちですが、物価高の今、“生活必需品”の米にも注目が集まっています。ただし、納税額によって寄付額の上限が定まっているので、ほかの方法と併用する必要があるかもしれません」
■1合12円の差でも年間では大きな金額差に
実際に、どれくらい価格の違いがあるのか。「秋田県産あきたこまち」の1合あたりの価格で比べてみた。ふるさと納税と、会員制の販売店である「コストコ(47.94円)」を除けば、最安値は関東近郊に展開しているホームセンター「カインズ」の1合あたり62.4円。首都圏の駅前のスーパーは1合あたり74.25円だったので、約12円安かったことになる。たった12円と侮るなかれ!
「米穀安定供給確保支援機構」のデータによると、家庭での1人あたりの年間の米消費量はおよそ250合。1合12円安くできれば、年間3千円もの節約に。3人家族なら1万円近くも食費の削減になる。また、生活協同組合も67.38円(コープみらいの場合)となかなかのお得度。
「ホームセンターはいちばん安く手に入りやすい場所。より手軽に買いたい場合は、カクヤスなどの配達サービスを使いつつ、ふるさと納税の注文分を併用するのが、賢い買い方ですね。
また、パックご飯も非常食として常備しておくべき。配送サービスで精米と一緒にまとめ買いをして、送料を節約するといいですね」
生活スタイルに合わせ、賢く買って物価高騰の夏を乗り切ろう。