クマの目撃情報が続いている人口50万人ほどの宇都宮市。6月9日には、住宅街にいたクマ一頭が捕獲されたが、市内には複数いる可能性があり、いまだ厳戒態勢が続いている。
山から人里までおりてきて、集落に依存する「アーバンベア」(都市型クマ)が、いよいよ住宅街や商店街に出没するようになってきた。7日に、宇都宮市内の中心部の商店街を走りぬけるクマの姿と、遭遇した歩行者が慌てて避難する様子が映っていた防犯カメラの映像は、衝撃を与えた。
「アーバンベアは、人の話し声や車の音など生活音を聞いて育つため、従来の音を鳴らして遠ざけるクマ対策は効果がない。以前、アーバンベアが何に反応するかいろいろ試したが、大出力のラジオ、クマよけ鈴はまったく効果なし、クマよけ用に販売されている金属製のホイッスルの音には首をまわしたが、吹き続けるのはこちらの息が切れてしまいました」
と語るのは、野生のクマの研究歴50年、クマと遭遇すること3000回以上、9回襲われたことがある、日本ツキノワグマ研究所の米田一彦所長。
もちろん、町中でもクマと出会わないことが賢明だが、クマと遭遇した場合は、すぐに建物や車に逃げ込むのがもっとも優先すべきこと。ただし、近距離で出くわした場合は……。
「本来、森林で生きているクマが、人里に出ると異常に興奮しています。とくに隠れるところがない平坦地にいると、クマ自身がさらけだされるからパニック状態に。以前、遭遇したオスグマは、私の顔を見るなり、体を上下に揺すって“ゴワゴワ”とうなりながら威嚇してきました。10mの距離まで詰められれば、クマ撃退スプレーを撃っても突破してきます。そのときは、とにかく石のようにかたまり、クマが去るのを待っていました」
住宅街や商店街などでクマと遭遇したら、どんな対策が必要なのだろうか?
「クマの視力はあまりよくないが、動体視力がいいため左右に動くものは追いかける習性があります。とくに手を振って逃げたり、急に動きだしたりすると、襲いかかってくる可能性が高い。ただし、深視力が弱いのか、前後の動きは、クマに見つかりにくい。クマから目を離さずに、ゆっくりと後ずさりして離れていくことです」
さらに米田所長はこう続ける。
「クマと出会っても、人間と認識させないことが大事。手を動かさない、急な動きをしないで、ジッとしていること。電柱や自動販売機のかげに隠れるのもいいでしょう。近くに隠れる場所がない場合は、手足を出さずに1本の電柱になったつもりで、ジッと動かずにいることで、人間だと気づかれずに、やり過ごせる確率がたかまります」
もしクマに襲われてしまったら、首の後ろで手を覆い、地面にうつ伏せで丸まること。
町中でクマと遭遇──これまでの常識では考えられないことが、実際に起きていることをしっかり認識しておこう。
