食品消費税を1%とし、消費者が負担する1%分は給付で補?する「食品消費税実質ゼロ」案が検討されています。社会保障国民会議の実務者会議で議長の小野寺五典自民党税調会長が6月17日に提案。この案なら2027年4月から実施できるといいます。
物価高に苦しむ人々は「1%でもいいよ。とにかく早く」と思うでしょう。ですが、食品消費税の減税は外食産業などを窮地に追い込みます。今でも外食は10%、持ち帰りを含む食品消費税は8%と差があるのに、減税が実現したら差が大きく広がるからです。
日経新聞の2025年度調査では、食品消費税が減税されると外食産業の7割が「業績がマイナスの影響を受ける」と回答しています。
また、消費税が10%と8%%の複数税率になってから、対応に困っているのがコンビニなどのイートインコーナーです。食品の消費税は8%ですが、店内で食べる場合は外食扱いとなり10%。食品消費税が1%になったら、同じ商品なのに持ち帰りは1%、イートインなら10%と、消費税が10倍になります。
コンビニなどでは「イートインの方はお申し出ください」と貼り紙で告知する店が多いのですが、どれほどの人が消費税を多く払うために申告するのでしょう。
■消費者のモラルに頼らざるをえない法律が問題
ただ、これを“イートイン脱税”などと呼び、ネット上では「申告しない人が悪い、脱税だ」と糾弾する意見が見られます。しかし、消費者のモラルに頼らざるをえない法律の立て付けが問題なのです。
また、突如現れた給付金も大問題です。高市早苗首相が先の選挙で掲げた「食品消費税ゼロ」公約を守るための苦肉の策だと思いますが、消費者それぞれが負担する食品消費税の1%分を正確にはかるすべはありません。小野寺氏は「所得に連動したきめ細かな給付」と説明しますが、結局「年収○○万~○○万円の方は△△円給付」と決めるしかないのです。
選挙公約でうたった「給付付き税額控除」も今では棚上げ状態。だとしたら、初めから私たちが負担する食品消費税分を給付金として配ってくれればよかったのでは。そうすれば、もっと早い実施が可能だったと思います。
厳しい物価高が続くなか、食品消費税が1%になっても実施は2027年4月からで、それまではお預け。国はガソリンと電気・ガス料金の補助で対応済みと言いますが、物価高対策には不十分でしょう。
さらに、高市首相は22日、食品消費税の減税は「2年後に元に戻す」と念を押しました。わずか2年で暮らしが安定すると思いますか。わずか2年のためにレジシステムを改修する手間とコストをどう考えているのでしょう。高市首相の“悲願”達成のアリバイ作りではないかと思えてしまいます。
本案に野党は反発していますが、衆議院では圧倒的多数の与党がこのまま押し切るのでしょうか。厳しい目で見守りたいものです。
【PROFILE】
おぎわらひろこ
家計に優しく寄り添う経済ジャーナリスト。著書に『65歳からは、お金の心配をやめなさい』(PHP新書)、鎌田實氏との共著『お金が貯まる健康習慣』(主婦の友社)など多数
