【前編】「お前、漫画家になれ」雑誌の“セフレ募集”で出会った15歳年下・元風俗嬢妻は天才だった! 漫画家夫婦明かす交際秘話から続く
産まれ育った街も、住んでいた街もまったく違っていた――。そんな二人が出会ったのは、すでに漫画家として活動していた桜壱バーゲンさん(62)が、雑誌の企画で行った“セフレ募集”がきっかけだった。
興味本位で応募した沖田×華さん(47)だったが、桜壱さんの優しさに惹かれて本当に結婚することに。
ある日、桜壱さんが、漫画のアシスタントしてくれていた妻に、とてつもない才能が眠っていることに気づいた。
「お前、漫画家になれ。絶対になれるから」
■「もう好きなものは描けません」
×華さんは『漫画アクション』の新人賞で選外奨励賞を受賞し、漫画家デビューを果たした。著述家のゲッツ板谷さんのホームページでWEB連載を始めた。
「ゲッツさんには私のペンネームもお願いしていたんです。催促の電話のときに寝ていたみたいで『起きたばっかなんだよ』と言って、沖田×華になったんです」
作品が描きたまると、桜壱さんの知り合いの編集者から単行本化の依頼があり『こんなアホでも幸せになりたい』(サン出版)を出版。2012年には発達障害を抱える自らの生活を描いた「毎日やらかしてます。」シリーズ(ぶんか社)も始まった。こうしたエッセイ漫画などの発表を数年続けるうちに、講談社から連絡があった。
桜壱さんはこう諭した。
「今から大事な話をします。大手でお前の好きなものは描けません。インディーズのロックバンドと一緒で、メジャーになったら、もう愛とか恋とかいう歌しか歌えないのと一緒です」
案の定、描いたネームが全ボツだらけになったのも初めてのこと。編集者とも1?2年、ぶつかりまくったという。
「それで絞り出したのが、看護学校時代、数カ月、産婦人科のバイトをしていたときのエピソードで作ったネームです」
×華さんの代表作となる『透明なゆりかご』だ。
「それまではまったく売れない漫画家だったから、単行本3巻くらい出せれば満足だったんですが、10万部、100万部、300万部って、どんどん部数が増えたんです。なんか全然実感がなくって、へーみたいな。いつもどおり仕事してるのに、景色が勝手に騒がしくなっていくって感じでした」
だが、しだいに大きな流れに翻弄されるようになる。2018年、同作品は講談社漫画賞にノミネートされ、NHKで、清原果耶主演でドラマ化されることも決まった。
しかも同時期、もう一つの代表作である『お別れホスピタル』の連載も始まり、ネーム作りに追われていた。
そんなとき、母と離婚し、17年も音信不通だった父の孤独死も重なり、心身が悲鳴をあげた――。
「ある日突然、字が書けなくなって、読めなくなって、私、もう漫画家終わったと思ったんです。何年もかけて身につけたスキルが全部なくなったと思ったら、衝動的に“人気がピークのときに自殺してやろう”って発想に……」
桜壱さんは×華さんの異変には気づいた。
「担当編集者から紹介されたメンタルクリニックに行って薬をもらい、ホテル住まいをさせて気持ちを休ませました」
