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孤高の女性ドラマー、シシド・カフカが第一線で活躍する女性ゲストを迎えて人生、仕事、そして愛について語り明かす対談連載『アイノカンジカタ』。第2回目はカフカのアートディレクションを担当する長嶋りかこさん。2人の縁を結んだのは「チョコレート」だったとか。

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チョコレート・ショップでの衝撃的な出会いから感覚を共有できる無二の存在へ

 

 

シシド・カフカ(以下:カフカ)「3年前に私がチョコレート屋さんでアルバイトしているときに、長嶋さんはそのチョコのパッケージのデザインをしていて」

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長嶋りかこ(以下:長嶋)「現場でショーケースのデザインもしてたんですけど、そのときに私が何か細かい作業をしていたんですよ。そしたらすごくキレイな子が、その作業を興味津々に見てきて。手先で何かすることに興味がある子なのかな、と思ったのが第一印象」

 

カフカ「実際そういうことはすごく興味があったんだよね。音楽の道が閉ざされたら職人になろうと思っていたくらいで」

 

長嶋「その時かなあ、シシドちゃんにペンを借りたんだけど、全部黒のペンだったんだよね。10何本かあるんだけど、よく見ると全部太さ違い。なんで黒ばっかり?って(笑)」

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カフカ「いや、どれだけ使っているかで先っぽの太さ変わってくるから(笑)」

 

長嶋「細い線でイラストを描くのが好きだって言われて、やっぱりそっち系の人なんだー、って。でも、こういうキレイな容姿なのに珍しいな、と思いましたね」

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太さ違いの黒いペンを何本も持ち歩く美少女は、広告や、商品パッケージのデザインを手がける、いわば「アートのプロ」である長嶋に強烈な印象を残した。その後、縁あって長嶋はアートディレクターとしてシシド・カフカのビジュアル戦略を一手に担うようになる。長嶋が見つめ続けた3年の間に、シシド・カフカはどんな変化を遂げたのだろう。

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長嶋「日々過酷な現場をたくさん経験してるんでしょうけど、そこからいろいろ吸収しているんだなと思います。だからどんどんキレイになっていきますよね。どんどんキレイになって、どこ行っちゃうんだ~!みたいな(笑)」

 

カフカ「長嶋さんからは……大きすぎて吸収できません(笑)」

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長嶋「いやいや全然大きくないです」

 

カフカ「長嶋さんに何かひとつ、提案というかお願いごとをするとしますよね。その話をしている間に、長嶋さんはすでに頭の中で考え始めているんです。いつも何かを考えていて、それを言葉やビジョンに起こしてうまく流れに乗せてくれる。すべての流れを客観的に捉えているんです。シシド・カフカっていう存在に対する考え方もそう。私の好きな質感を最初に捉えてくれたのも彼女だし、本当に信頼しています」

 

長嶋「ありがとう。嬉しい!たぶんね、好きなものが似ているんですよ。だから捉えやすい。良い意味でアンチというか、変わっているというか。そもそも普通、この容姿を持っていたらドラムじゃないでしょ?そこもちょっと変だし」

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カフカ「変じゃないよ(笑)!」

 

長嶋「ちなみに私、群れがダメなタイプなんですが、そこもちょっと近いと感じたんですよね」

 

出会いから3年。何でも話せる関係になった2人だが、あえてお互いへの要望を聞いてみた。

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長嶋「シシドちゃんは絵も描くし、写真も撮るから、何かを感じて外に出すという作業は得意なんだと思う。だから、いつかシシドちゃんが感じたものを全部出して作った曲を聴いてみたい」

 

カフカ「結構出していると思いますけど、曲を作るスキルがない……。でも、メロディを考えることは好きなのでいつか絶対やってみたいですね。今も貯めてるっちゃあ貯めてるんですけど、やめちゃうかもしれない(笑)」

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長嶋「これからもっと本来のエッジをもっと効かせていってほしいですね。売れていくと思うけど、丸くならずに尖っていてもらいたい」

 

カフカ「なんか、ざっくり期待してくれてる(笑)。ここがいいんですよね。普通、指摘するときはもっと細かいと思うんですけど、彼女は『いいと思う』『ちょっとダメ』とかざっくりしてる。感覚で言ってくれてる感じ」

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長嶋「それはシシドちゃんに半分憑依しての指摘だと思うんですよ。自分の好き嫌いで言うならもっと細かくあると思うんですけど、そうじゃなくて半分彼女に乗り移った気持ちで『シシドちゃんだったらこれは嫌い、これは好き』とか、彼女のあるべき姿を想像して指摘していますね。女性だからっていうのもあると思います」

 

カフカ「うん、周りは男性スタッフばかりだから、日々答えを出してくれて助かります」

 

長嶋「感覚的なことでもキャッチボールできるからそれがすごく嬉しいですよね。男の人は裏付けがないと心配しちゃうけど、女の子は感覚的な言葉も不安無く捉えられるというか。感覚を共有できるから」

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 次へ続く

ながしま・りかこ

 

アートディレクタ、デザイナー。長嶋りかこ

「ラフォーレ原宿」の年間イメージ広告のアートディレクションをはじめ、ロサンゼルスのプライベートチョコレート「YVAN VALENTIN」のパッケージデザインや、ハンドメイドアートストア「BONDO」など、広告をはじめ空間、CI、プロダクト、映像などのアートディレクション、グラフィックデザイン、ディレクター等幅広く手がける。また、現代美術家の宮島達男氏との非核アートプロジェクト「PEACE SHADOW PROJECT」や、水の形をした鏡のプロダクト「mizukagami」、SWAROVSKI にてハローキティとのコラボアート作品を発表するなど、活動は多岐にわたる。東京ADC賞、NYADC銀賞、カンヌデザイン部門銀賞はじめ国内外の受賞多数。

RIKAKO NAGASHIMA

http://rikako-nagashima.com/

 

 

 

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