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すっかり寒くなりました。もう師走ですね。片岡愛之助でございます。

12月26日まで、京都四條南座「當る申歳 吉例顔見世興行」に出演。夜の部では『勧進帳』で富樫左衛門という大役を勤めさせていただいております。

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京都四條南座の正面玄関です。まねき上げ、豪華でしょう?
すっかり年末です。(C)片岡愛之助

 

南座での思い出はいろいろございますが、もう12年も前に出演させていただいた時代劇「夜桜お染」(フジテレビ系)のときも、この南座に出勤中の撮影でございました。

僕はこの「夜桜お染」が連ドラ初出演。オファーにはふたつ返事でお引き受けさせていただきましたが、当時はまだプロダクションにも所属していなくて、僕は舞台とうまくスケジュールを調整できるかなと心配でもありました。

そもそもどうして僕にお声をかけてくださったのか、経緯がわからない。僕は不思議に思いながらも誰にうかがえば教えていただけるかもわからない状況で撮影が始まり、舞台出演の間隙を縫って太秦の撮影所に行く、という慌ただしさの中で撮影は進んでいきました。

しばらく経ったころ、主演の若村麻由美さんからお食事にお誘いいただきました。

「いやー、よかったわー」

と言うので、「何がですか?」と聞き返すと、僕のスケジュールが取れて、というご返事。聞いてビックリ。僕を番組のプロデューサーに推薦してくださったのは、若村さんご本人だったんです!

若村さんが叔父の片岡仁左衛門にインタビューするというお仕事で四国のこんぴら歌舞伎までいらっしゃったとき、ちょうどご自分が主演の「夜桜お七」のキャスティングを進めていた、と。

ちゃんと江戸弁が話せて、立ち廻りができる人、誰かいないかしら……。そう思いながら、叔父の『与話情浮名横櫛』を見ていると、鳶頭役が目についた。この役者はだれだ……。この人にやってもらおう、とすぐに心に決めたそうです。

早速、パンフレットを見て、名前を調べてプロデューサーに電話したそうです。ちゃんと当たってくれたのか、くれていないのか報告がないままクランクインしてしまい、蓋を開けたらちゃんとキャスティングされていた。それで、「よかったー」が第一声だったというわけです。

「夜桜お染」の撮影はけっこうハードでした。ハードにしたのは自分自身なんですけどね。クランクイン間もないころ、屋根の上を走るシーンがありました。台本にはスタントマンを使うと書いてありましたが、「立ち廻りとか自分でできますから、吹き替えはいりませんよ」と、申しあげました。僕は運動神経には自信があるほうですので、飛んだり跳ねたりは大丈夫です、と。

で、いざ撮影に臨むと、夜ですよ。ナイター撮影です。

「屋根の上、走りまーす」と助監督が大声で指示を出します。どこに屋根のセットが組んであるのかなと思ってお聞きすると、普通に民家の屋根の上を指さすんですよね。メッチャ高いんですよ。

これって、リアルに屋根? しかも疾走!? 驚きでしょう。

ちょっと下を見ると、いろいろな機材がたくさん置いてあって、足を滑らせて落ちれば絶対に串刺し状態。これはスタントマンの領域だって(笑)。そこのところをきちんと説明していただきたかったですね。

とにかく、走りました。「よーい、スタート」の合図とともに、ピューッて。

「いいですね、もう1本お願いします」

いいなら、テイク2やらないでほしい(笑)。

体力勝負はまだまだ続きました。

船に乗っての立ち廻りシーンがありました。

立ち廻りをしながら、船がちょうど太鼓橋の下を通りかかります。そこで僕が船から橋に飛び移る、と台本には書いてあります。

「どうやるんでしょう?」とお聞きすると、

「船から橋にへばりついてもらって、上がっていただきます」

前回での不安な様子が伝わったのでしょうか、このときはスタントマンの用意ができていました。スタントマンにお願いする手もあったが、教わったとおりにやってみたら、難なく橋の上に飛び移ることができた。

「では、僕がやります」

また、ある立ち廻りのシーンでのこと。匕首をくわえて、バク転を2~3回決めてから相手をつかまえ、バーンと倒す。

監督の「はい、カット!」という興奮気味の声がうれしかったですね。

ですが、実はこれ、1回目の演技はカメラテストなんです。僕は舞台出演の合間に体力を消耗した状態で撮影に臨んでいましたから、慣れて来たら、テストのときは少しセーブして体力を温存するようにしました。

あるとき、バク転から、相手をバーンと倒すという場面の本番で、カメラテストより思い切って演じたところ、力が入りすぎて、相手が吹き飛び、後ろにあった戸がブワーッと壊れてしまった。

あちゃー、NGかな、と思って監督のほうを見ると、

「リアルでよかったです。これ使います!」

一発OKでした。見ていた若村さんも、ビックリ。

「吹き替えなしでバク転とか、立ち廻りやる人は見たことない。真田広之さん以来ですよ」

結局僕は全部のシーンで吹き替えを使うことなく、なんとかアクションシーンの撮影を終えることができました。

いまも、アクション系、できますよ。期待しててください。

 

さて、僕が進行を務めさせていただいております、BS日テレ「片岡愛之助の解明! 歴史捜査」(木曜日21時~)の12月10日の放送は、『幕末の交渉人 勝海舟 江戸無血開城の真実に迫る!』をお送りします。

歌舞伎にはこれを別角度から描いた『将軍江戸を去る』という名作がございます。番組をご覧になって、興味を持たれましたらこちらも是非ご覧ください。江戸無血開城という史実をより興味深く見ていただけることと存じます。

番組からは日めくり「片岡愛之助が贈る 歴史上の英雄!今日の名言~毎日を前向きに生きるメッセージ!~」も好評発売中です。!

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勝海舟、ご期待ください!
BS日テレ「片岡愛之助の解明! 歴史捜査」(C)永田理恵

 

年末の忙しさに体調をお崩しになりませんよう、ご自愛ください。

片岡愛之助

プロフィール

1972年3月4日生まれ。’81年12月、十三世片岡仁左衛門の部屋子となり、南座『勧進帳』の太刀持で片岡千代丸を名乗り初舞台。’92年1月、片岡秀太郎の養子となり、大阪・中座『勧進帳』の駿河次郎ほかで六代目片岡愛之助を襲名。’07年12月上方舞・楳茂都流の四代目家元を継承し、三代目楳茂都扇性(せんしょう)を襲名した。

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