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みなさん、こんにちは。今回は17歳という史上最年少でノーベル平和賞を受賞したパキスタンのマララ・ユスフザイさんを取り上げたいと思います。ノーベル賞委員会は10月10日、女性や子供の権利保護を訴えてきたパキスタンの女子学生・マララさんと、インドの児童労働問題活動家であるカイラシュ・サティヤルティさん(60)に今年のノーベル平和賞を授与すると発表しました。

 

委員会は2人の授賞理由として「子供や若者への抑圧と闘い、すべての子供の教育を受ける権利のために奮闘している点」を挙げ、「平和的な世界の発展のために子供や若者の権利の尊重は不可欠であり、特に紛争下の地域では子供の権利侵害が暴力の連鎖を生んでいる」としました。そしてマララさんについては「未成年ながらすでに少女への教育の権利のために闘い続けており、子供と若者たちに見本を示すことで、彼らが自らの状況を改善することにも貢献してきた。最も危険な環境で活動してきた彼女はその勇敢な闘いを通じて、少女たちが教育を受ける権利を求めるための代表的な代弁者となった」としました。

 

マララさんの17年は波瀾万丈でした。97年にパキスタン北部山岳地帯のスワート地区で生まれた彼女は、私立学校を経営する父親の学校に通いながら医者になるべく勉学に励んでいました。しかし同地区は最近まで反政府組織でイスラム過激派のタリバンによって実行支配されていた地域。彼らは女性の教育や就労の権利を認めず数々の女子向け学校を爆破していました。

 

 

それにマララさんは一人で立ち上がります。09年、当時11歳だった彼女はイギリスの国営放送BBCのウェブサイトにあった、タリバンの強権支配や女性への人権弾圧を告発する「パキスタン女子学生の日記」と題するブログへ匿名で投稿するようになります。恐怖に覚えながらも声を上げる不屈の姿勢は、人々の共感を呼びました。

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これに強烈な不満を持ったタリバンは「マララさんの行為はイスラム教の教えに反し、決して許されない行為だ」として、残忍にも彼女に対する暗殺指令を出します。そして12年10月9日、武装集団がマララさんの乗った通学バスを襲ったのです。彼女は頭部を撃たれ、生死をさまよう重傷を負います。この15歳の無抵抗な少女に対する残虐なテロ行為は世界中に衝撃を与えました。マララさんはイギリスの病院に搬送されましたが、奇跡的に回復。今もイギリスで学校に通いながら女性や子供の教育権利を訴えています。

 

そしてマララさんをさらに有名にしたのは、13年10月、16歳の誕生日に国連の会合で行った演説です。これが今回のノーベル平和賞授賞を決定づけたのではないかと言われるほど、世界中に感動を与えるものでした。彼女は「一人の子ども、一人の教師、一冊の本、一本のペンが世界を変える」とし、「教育こそが未来の平和をもたらす鍵」と述べます。そして、15歳の自分を攻撃したタリバンに対しても次のように語るのです。

 

「私は、自分を撃ったタリバン兵士さえも憎んではいません。銃を持つ私の目前に彼が立っていたとしても、私は彼を撃たないでしょう。非暴力、それこそ私の父と母から学んだ“許しの心”です。私の魂が私に訴えてきます。『穏やかでいなさい、万人を愛しなさい』と――」

 

 

戦争は大人の男が始め、罪のない無力な子供や女性が犠牲になるのが人間の歴史の常です。しかし10代でありながら海のような包容力と愛情でその罪を許し、「声無き弱者」のため勇気を持って声を上げ続けるマララさんは、真のノーベル平和賞に値する人だと思います。

 


ジョン・キム 吉本ばなな 「ジョンとばななの幸せって何ですか」(光文社刊・本体1,000円+税)

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吉本ばなな

1964年東京生まれ。’87年『キッチン』で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。’88年『ムーンライト・シャドウ』で泉鏡花文学賞、’89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で山本周五郎賞、’95年『アムリタ』で紫式部文学賞、’00年『不倫と南米』でドゥマゴ文学賞をそれぞれ受賞。海外でも多くの賞を受賞し、作品は30カ国以上で翻訳・出版されている。近著に『鳥たち』(集英社刊)、『ふなふな船橋』(朝日新聞出版社刊)など。

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