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先日、自民党「放送法の改正に関する小委員会」はNHK受信料の支払い義務化を検討するよう、NHKや総務省に求める提言を公表しました。中でも特に総務省に対しては、受信料の支払い義務化に向けての具体的な制度設計に加え、強制徴収や罰則規定など、支払い率を高めるための仕組み作りなどについても検討を求めました。

背景には、公共放送であるNHKの受信料支払いにおける不公平さがあります。14年度時点で受信料の支払い率は76%。つまり残り24%の世帯は受信料を支払っていないことになります。NHKは「17年度末までに支払い率を80%に」という目標を掲げていますが、そのため使われる経費はなんと年間約700億円。もし義務化が実現すればそうした経費の大幅削減が可能となり、視聴者が負担する受信料自体も引き下げられるそうです。とはいえ受信料の支払い義務化には根強い反対があり、過去数回にわたって浮上しては消えていきました。そこで以下ではNHK受信料の支払い義務化を巡る賛否と今後について考えたいと思います。

まず日本の放送法によると、受信料は「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」が支払う料金となっています。元々は戦前のラジオ放送に対する聴取料として始まりましたが、戦後、GHQが日本の放送制度民主化の一環として「受信料制度」を誕生させた経緯があります。番組制作や運営に必要な財源を税金や広告収入に依存しない収入基盤とすることで、公共放送としての自主性や自立性を確保しようとしたのです。そして現在も、NHKは事業収入の9割以上を受信料収入に依存している状態です。

ここで興味深いのは、受信料の支払い率に地域差が見られる点です。NHKが12年に公表した都道府県別の受信料世帯支払い率によると、秋田県が94.6%と最高を記録しているのに対し、東京は60.8%、大阪府は57.2%と都市部で低い傾向が見られます。理由についてNHKは「共同住宅など世帯の数や移動が多い地域では把握が難しく、単身世帯も面接が難しい」と説明。法律的にはテレビを設置した者にはNHKと受信契約を結ぶ義務がありますが、NHKに強制調査権がないため義務付けまでできないのが現状なのです。

また受信料の支払い義務化が実現したとしても、実効性には疑問が残っています。というのも現状、政府側は受信料の未払い者に対しての罰則規定制定まで考えていないからです。これに関して自民党の小委員会はマイナンバーの活用なども含めた徴収方法や支払い義務化による受信料値下げの試算などを総務省に求め、NHKの籾井勝人会長も「受信料支払い率を高めるためにマイナンバーの活用を積極的に検討したい」と述べています。

そうした徴収方法については、諸外国から学ぶ手もあるでしょう。例えば韓国でもKBSという公営放送がありますが、受信料徴収は韓国電力に委託され、電力料金とともに徴収される仕組みになっています。この委託制度が導入されたのが94年。その効果は抜群で導入前の徴収率は53%に過ぎなかったのが、2年後の96年には89%まで上昇。5年後の99年には99%までに達し、ほぼすべての世帯から受信料の徴収ができています。

いずれにしても受信料を真面目に支払っている人にとって不公平な状態が存在し、それが数十年にわたって放置されてきたことを考慮すれば、法改正はやむを得ないように思います。ただし受信料の支払い義務化に関しては、まだまだ議論を要する問題が山積みなのも事実。政府が結論を急がず慎重に議論し、国民の理解を得られるまで説明と対話を続けていくことが大事だと思います。


ジョン・キム 吉本ばなな 「ジョンとばななの幸せって何ですか」(光文社刊・本体1,000円+税)

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吉本ばなな

1964年東京生まれ。’87年『キッチン』で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。’88年『ムーンライト・シャドウ』で泉鏡花文学賞、’89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で山本周五郎賞、’95年『アムリタ』で紫式部文学賞、’00年『不倫と南米』でドゥマゴ文学賞をそれぞれ受賞。海外でも多くの賞を受賞し、作品は30カ国以上で翻訳・出版されている。近著に『鳥たち』(集英社刊)、『ふなふな船橋』(朝日新聞出版社刊)など。

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