(C)小山愛子/小学館
『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し番組”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『マンガ』ということで、幼いころからマンガ好きな、歌人・小説家の加藤千恵さんが最推しマンガを紹介!
【最推しマンガ】『舞妓さんちのまかないさん』小山愛子著・小学館
舞妓さんという職業を知らない方はいらっしゃらないと思う。実際に京都に足を運んだ際に(住まれている場合はなおさら)、見かけたということもあるだろう。
しかしこのマンガの主人公は、そんな有名な舞妓さんではない。舞妓さんたちが住んでいる、屋形と呼ばれる場所でまかないを担当する、16歳のキヨだ。タイトルの「舞妓さんちのまかないさん」とは、キヨ自身を称したもの。
中学を卒業したばかりのキヨは、同じく舞妓さんを夢とする、親友のすーちゃんと一緒に、青森から京都までやってくる。彼女たちは住み込みで舞妓さんになるための修業を始めるのだが、筋があって優秀なすーちゃんに対し、キヨはまるで向いていない。
舞妓さんになるのはあきらめて青森に帰ったほうがいいと言われ、従うつもりでいたときに、まかないを担当していたおばちゃんが倒れてしまう。市販のお弁当にもみんなが飽きはじめた頃、キヨは台所に余っていたもので親子丼を作りあげる。あたたかな親子丼は、みんなをホッとさせ、それを機に、キヨはまかないを担当するように。
以上が、キヨが「舞妓さんちのまかないさん」となるまでの流れだけれど、一話ずつが短いため、数話を読むうちに、徐々にわかっていくようになっている。そのあたりの描き方もとても上手で、以前の話で登場していた小道具が別の話で再び登場するなど、ささやかな伏線が回収されていくのも読んでいて楽しい。
舞妓さんというと、遠い世界の存在に感じてしまうのだが、このマンガで描かれている彼女たちの姿は、とても親しみやすく、まるで知り合いにいてもおかしくないようなものだ。自分のプリンが他の誰かに食べられてしまったことを本気で怒り、食べたい料理をキヨにこっそりリクエストする。イラストのタッチがとても可愛らしいこともあり、彼女たちが、年下の親戚や友だちであるかのような柔らかな感覚が読者であるこちらに生まれてくる。
まかないさんというだけあって、キヨの作る料理(どれも簡単なレシピ付き!)はとてもおいしそうなのだが、自然に挟みこまれる、舞妓さんの日常に、より興味が湧く。作ってはいけない料理があったり、コンビニに入ることができなかったり。知らなかった事実が、京都をさらに魅力的な場所にさせる。京都、行きたいなあ。そんな気持ちになりながら、今日もこのマンガをついめくってしまう。