30代前半、独身、彼氏ナシ。絶賛婚活中だが、ナポリタンを愛するあまり、ナポリタン以上に愛せる彼に巡り合えない私。そんな私は、とりあえず気になった男性とデートを重ねる日々を繰り返すが……。はたして私は、愛するナポリタンを超える理想の相手と結ばれることができるのか!?
「ナポリタンより魅力がない人、ナポリタンに対する私の思いを理解してくれない人、そしてナポリタンに対して敬意を払わない人はアウトなんです。」
■■今回の妄想彼氏(仮)■■
会社の受付口で出会った営業マンの彼。細身、メガネ、高身長のインテリ系男子。
先週、私が受付の仕事中に、営業で来ていた彼に声をかけてみたら(本当はタブーだけど…笑)意外にも“喫茶店好き”で意気投合。彼はコーヒーに目がないみたい。もちろん私は、“喫茶店”というより、「“ナポリタン”の名店が喫茶店に多い」っていう理由で“喫茶店好き”なんだけどね(笑)だけど、彼とのデートはなんとか取り付けたってかんじ。だって、彼って“食”に関して本当に興味がないんだよね。だから“ごはん”に誘うのが本当に大変だった。まぁ、その彼を呼び出すのも私の腕の見せどころなんだけど…なんて(笑)
そんな彼が唯一興味を示すのが「喫茶店」。喫茶店といえば、東京・神田神保町の老舗『さぼうる』でしょ。彼はここの店に何度も足を運んでいるみたい。けど、やっぱりコーヒーよりも、彼とナポリタンが食べたい!ちなみに、姉妹店の「さぼうる2」はナポリタンが名物なんだよね。よし、決まり。『さぼうる2』のナポリタンを食べに行こう!
待ち合わせ場所にきっかり18時到着。いつもの私なら遅れて登場だけど、何かと几帳面な彼だからちゃんと時間は守らなきゃ…と思ったら、彼はもう既に居る(笑)そっか、彼は10分前行動の人だったか。しまったなぁ~と思いつつも、なんとか時間に間に合ったから良しとしよう。(言い訳)
普段の彼はあまり笑わない。とにかく愛想というものが彼には全く無い。
「ほら、着いたよ」
ぼーっと、1人事を考えていたら彼に腕を引かれ、店内に入る。
入り口では、ピシっと蝶ネクタイで決めたギャルソンが出迎えてくれる。一階と地下に別れた席、家具も年季が入っていてなんだか歴史を感じる。
「じゃあ、僕はコーヒーで……」
「ナポリタンとコーヒーのセット2つで」
と彼が注文を終える前に、無理やりナポリタンを注文。
だって、せっかく来たのにナポリタンを頼まないってありえないでしょ!コーヒー好きも考えものだ。
と、内心怒り交じりにツッコミを入れる。不機嫌な顔を察してか、「ごめん、ごめん。普段夕飯食べないからさ」と言い訳をこぼす。
店内を照らす温かなオレンジの明かりが二人を包む。
注文後15分で、料理が運ばれ、出来立ての山盛りナポリタンから湯気が立ち上る。それと、ここのテーブルって通常のものより一回り小さい。ナポリタンを口に運ぶ度に、彼の顔がすごく近く感じるんだよね。
「美味しいね」
思わず彼が小さく微笑む。些細なことだけど、普段見せない彼の顔にちょっと嬉しくなる。
「麺が細麺で食べやすい。」
「ケチャップの程よい甘さと濃さが細麺に合う!シーザーサラダも美味しいし、ナポリタンと良いコンビだ!」
そう言うと、彼が「なんだよ、それ」とツッコミながらまた笑う。彼の柔和な表情に焦る私。こういうのに弱い。密かに嬉しさを噛み締めながら私は残りのナポリタンを平らげた。
食後の満足感に浸っていると、いきなり彼が、
「あのさ、これ食べきれないんだけど……おなかいっぱい」
とまさかのお願い。私にとってはこのボリュームが堪らないのに!仕方なく、彼が残したナポリタンを平らげる私。
彼の仕事の都合で、早めに帰宅することに。
「今日は楽しかった。やっぱりここのコーヒーは旨いな。コクが違うよね。ナポリタンもボリュームにはかなわなかったけれど、久々に懐かしい味を食べられて嬉しかったよ」と別れ際に彼が一言。
「うん。私も楽しかった。また時間あったら来ようね」
そう言って、二人は店前で別れた。
彼とのナポリタンデートで、ツンデレな彼の姿を見ることができて幸せだったけれど、なんだかどうも引っかかる……。そうだ、彼の感想ナポリタンよりコーヒーの方がメインで話してた……それにやっぱりナポリタンを食べるには、もっと豪快に食べて欲しかったな。
「また、次を探すか」
まだ寒さが残る3月。私に春が来ることはあるのか……
「さぼうる2」のナポリタンは、喫茶店とは思えないボリューム感が特徴。濃すぎず、薄すぎずの程よい味のバランスが飽きない美味しさ。食器も長方形の平皿にナポリタンとサラダを盛りつけるところもレトロ感があってステキ!年齢層も若干高く、落ち着いた雰囲気。会社員のランチや1人客の女性、読書を楽しむおじいちゃん…ゆっくりナポリタンを楽しみたい方におすすめ。
単品650円、セットドリンクをつけても850円でこのボリューム。ポイントは2人席の机の広さが狭いこと。彼との距離も縮まること間違いなし!
甘ナポ ★★★☆☆
懐かしさ★★★★☆
2人の距離 ★★★★★