婚活女子:音羽 ヒカル子

30代前半、独身、彼氏ナシ。絶賛婚活中だが、ナポリタンを愛するあまり、ナポリタン以上に愛せる彼に巡り合えない私。そんな私は、とりあえず気になった男性とデートを重ねる日々を繰り返すが……。はたして私は、愛するナポリタンを超える理想の相手と結ばれることができるのか!?

「ナポリタンより魅力がない人、ナポリタンに対する私の思いを理解してくれない人、そしてナポリタンに対して敬意を払わない人はアウトなんです。」

■■今回の妄想彼氏(仮)■■

外見:高身長、ガタイの良い体型。

性格;ミーハーで新しもの好き。好奇心旺盛で、知りたがり。

出会い:同僚との合コン

関係性:先週の合コンで出会ったばかり。合コンで連絡先を交換したきりで進展はなし。

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「先週の合コン楽しかったなぁ……」しみじみと余韻に浸る月曜日の朝。嫌々、仕事に向かう準備をしながら、ネットのニュースをチェック。すると、ニュース欄に“宮城県発祥のナポリタン専門店『俺たちのナポリタン』が四ツ谷にオープン!”の文字が。

 

「これは、行くしか無い!!」

 

月曜日特有の倦怠感が一気に吹っ飛び、“新”と“ナポリタン”の文字に心躍る。

 

ナポリタンの新店舗ができると聞いたら、血が騒ぐのが“ナポ女子”ってもの。

1人で行くのもいいけど、どうせなら誰かと食べに行きたいな……

そうだ!先週合コンで出会ったイケメンなカレを誘ってみよう。“ナポリタン”をきっかけに恋が進展するかも……♡

 

と、淡い期待を寄せながら、昼休みに気になるカレに電話をしてみることに。

 

「……あ、もしもし。音羽です。この前は合コンでありがとうございました。」

 

「おー!音羽さん。こちらこそ、ありがとう。その後、ずっと連絡なかったから、いま電話来てびっくりしたよ(笑)」

 

「え、そんな(笑)。急にお電話しちゃってごめんなさい。」

 

「いやいや、嬉しいよ。で?どうしたの?」

 

「えーっと……ナポリタンを一緒に食べませんか?」

 

「ちょっ。え!?どういうこと??(笑)」

 

「四ツ谷に新しくできたナポリタンの専門店があって。もしよければ、今晩一緒に行きませんか?(笑)」

 

「へ~!なるほどね。ナポリタンの専門店か!俺、全然ナポリタン詳しくないけど……(笑)新しいショップは興味あるから行ってみたいな。」

 

「やった!じゃあ一緒に行きましょう!詳しいことは、また後で連絡しますね。」

 

「うん、よろしく。“ナポリタン”楽しみにしてるよ(笑)」

 

あっさりOKがもらえた。ありえない。だって、こんなにストレートにナポリタンデートに誘ったのは初めてだったから。(これも“ナポリタン”の言葉の魔力なのか……!?)

 

「今日はいい日だ。」

 

そして、19時に店内で待ち合わせ。仕事が立て込んでいたらしく、待ち合わせ時間に遅れて来たカレは、汗をにじませながら登場。なんだか、ドキドキする。男の人の必死な姿を見てわき起こる、この感覚は久しぶりだ。

 

ブルーのシャツに、白のパンツを合わせたハイセンスなコーディネートで登場した彼。

まだ新しい店内にもかかわらず、食器がレトロな銀皿なところが妙に懐かしい雰囲気を出している。

 

「とりあえず、水もらえるかな」

「これ、まだ口つけてないからいいよ」

 

差し出した水がガタンと揺れる。彼は落ち着きがなく、焦っている様子。

 

一息ついたところで、壁に貼られたメニューを見上げる彼。上を見る姿も様になっている。端正な顔立ちをした彼のひとつひとつの所作には、思わず見とれてしまう。

 

2人は、ナポリタンを注文。ナポリタンには、“一押し”の文字。彼は札を指さして注文した。

 

待つこと15分。ちょうどサラダを食べ終わる頃にナポリタンも運ばれてきた。

 

こんもりと盛られたナポリタンに目玉焼きや赤ウィンナーがトッピングしてあるレトロ喫茶店風スタイル。

 

ナポリタンの味は、酸味のある甘いソースが口に残る。しかも、かなりたっぷりとソースが麺に絡む。重量感も申し分ない。1人前にしては、かなりの量だ。セットで頼むと、チキンサラダとアイスコーヒーがついてくる。コーヒーもさすが喫茶店。自家焙煎でコクも風味もすごく良い。

 

「ナポリタンのケチャップソース、いい味だね。しかも、麺の“たっぷり感”すごいね!」

「麺のもちもち感も最高!太麺だし、茹で加減もちょうど良い!」

と笑顔で感想を述べ合う2人。ここで、そう話してるのもつかの間、彼がいきなり……

 

「あぁっ!!」

と、大きな声を上げた。

 

すると、べっとりと白のズボンにナポリタンの“ケチャップソース”が染み付いている。2人は、ズボンにへばり付いた麺が、ピカピカに磨かれた床の上にゆっくりと落ちていく様に目を落とす。

 

「最悪だ……」と、彼がポツリ。

「本当に最低だ」と、私は心の中で一言。

 

カレは、“ナポリタン”を食べるにあたって、1番あってはならない失態を犯してしまった。

ここで改めて、私が肝に銘じている“ナポリタン3ヶ条”を声を大にして言いたい。その1、ナポリタンは、ケチャップソースに気を付けるべし。その2、ナポリタンを食べるには白い服を着ではならぬ。その3、ナポリタンを粗末に扱わぬべし。

 

今回の事件は、カレがあまりにも“ナポリタン”への注意力がなかったために、起きてしまった事件。一瞬にして色々な想いが冷めていく。そして、こういう時に人の“本性”というものが現れるのも世の常。

 

「あー!!ありえねえ!ナポリタンなんか大嫌いだ!!」

と、怒りをあらわにする彼。

私は思わず、“ナポリタン愛”のスイッチが入ってしまった。

「これって、ナポリタンが悪いわけ?」

ふつふつと怒りが込み上げてくると、“口撃”に拍車がかかる。

「あなたがナポリタンを食べるのに、白い服を着てきたからでしょ?そんなの自業自得!ナポリタン食べるなら、他の色着て出直してきなさい!」

 

つい彼の怒りに応戦して、私まで声が大きくなってしまう。

 

「自分が悪いのに、ナポリタンのせいにしないで!それに、あなたとなんかもう2度とナポリタンは食べに来ようとは思いません!」

 

と最後に吐きかけ、バッサリとカレを斬った。なんだか今回のナポリタンの味は、いつも以上に濃く、渋く感じる。

 

カレはきまりが悪い様子で、店を出て行ってしまった。ナポリタンは残されたまま。期待していたカレだけに、とにかく悲しさが大きい。だけど、ナポリタンをぞんざいに扱うなんて許せない。結局、“それまでの男だった”ということ。

 

「また、次を探すか……」

 

こんなに頑固な彼にちょっと幻滅。ナポリタンは、やっぱり楽しく美味しく食べなくちゃね。

今日のヒトミコト『妄想を繰り広げる女性記者ヒトミのTwitter連動コラム』  @hitominapoli

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ナポリタンのケチャップソースが垂れることは気をつけたいところです。ナポリタンを食すにあたって、大きな関門といっても良いですよね(笑)私も、ナポリタンを食べるときは、なるべく染みの目立たない赤や黒などを着ています。今回訪れた、『俺たちのナポリタン』は、本店の宮城県では有名なナポリタンの名店。東京に初上陸した同店は、ナポリタン好きには嬉しい“ご当地ナポリタン”を味わえる数少ないお店。ケチャップソースの酸味しっかりと効いている、宮城の味をぜひご賞味あれ!

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