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スーパーのレジに並ぶとき、ついつい列の前にいるおしゃれなお兄さんのカゴの中を観察し、「同じスーパーで買い物しているのに、なんておしゃれなセレクション……」と、自分のカゴの中の玉ねぎを眺めながら、頭の中でつぶやいています。

仕事に遊びに忙しいパリの人々ですが、彼らはとても効率的に買い物をし、こだわりを持って食生活を楽しみます。私のまわりにいるパリジャン・パリジェンヌの多くは、週末に、あるいは平日に時間をみつけて、まとめて1週間分の買い物をしています。必要なものを書いたリストを見ながら、慣れた手つきで素早く商品を選んで大きなカートの中に入れ、配達専用レジに並ぶ――必要のないものは買いません。

パリのスーパーでは、ポイントカードを持っていれば50~100ユーロ以上(店によって異なります)の買い物で配達料が無料に。「水は3パックまで」など、店ごとに細かいルールはありますが、買ってから3時間以内に自宅まで配達してくれるのです(配達までの間は冷蔵保存してくれています!)。

とはいえ、生ものをまとめて買うことはできないので、肉、魚ほか鮮度が大切な食材は、マルシェや専門店で入手する人が多いでしょう。パリ市内だと家の近所にひとつはマルシェが立つので、人々は絶えず新鮮なものを食べられる仕組みになっているのです。こうして、必要最低限の食材を1週間分まとめ買いしたら、あとはその日の気分で買い足していくのがパリのスタイル。

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左:スーパーの野菜売り場はとっても鮮やか。
右:チーズ売り場は、その種類がかなり豊富にそろっている。

ぜいたくをすることもあります。日本のデパ地下の充実度には負けますが、パリ市内には大きなデパートが3軒あり、右岸に「Galeries Lafayette(ラファイエット)」と「Magasins du Printemps(プランタン)」、そして左岸に「Le Bon Marche(ボンマルシェ)」。日本のデパ地下とよく似ているのはラファイエットの食料品フロアで、話題のお菓子屋さん、世界各国のお惣菜屋さんを一度に楽しむことができます。フロア内でいただくこともできるので、買い物途中のマダムが、優雅にもシャンパーニュ片手にキャビアをつまんでいるなんてことも。

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左:「Petrossian(ペトロシアン)」はキャビア専門店。スモークサーモンやタラマ(タラの卵をペーストにした食材)がとてもおいしい。
右:豚さんのおみ足が圧巻の、スペインの生ハム専門店「Cinco jotas(シンコホタス)」。

さまざまな商品が1カ所で購入できる〝デパート(百貨店)〟は、19世紀のフランスで生まれました。ブシコーというフランス人が、パリに初めての百貨店「ボンマルシェ」を誕生させ、世界へと広まっていったのです。このときから人々の思考は「必要に迫られる買い物」から「欲望による買い物」に移り変わったといわれています。「百貨店は女性の理性を麻痺させるように創られている 」と、フランス人作家・エミール・ゾラが小説『Au bonheur des dames(ボヌールデダム百貨店)』の中に書いているように、デパートができてすぐの時代から、買い物依存症に陥ってしまうマダムもいたようですよ。

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左:お土産に喜ばれそうなかわいいパッケージのチョコレートたち。
右:スーパーでは買えない、とびきりおいしい「Setaro(セタロ)」のパスタも。

そして、今やデパートの食料品フロアにとどまらず、パリの人々の間では〝食のセレクトショップ〟が人気です。おしゃれな店が集まる北マレ界隈にできた「La Maison Plisson(メゾン・ プリソン)」もそのひとつ。こぢんまりとした店内ですが、全フロアで食料品のみを扱い、1階には生鮮食品、地下に降りると世界から選ばれた食材がズラリ、ワインのセレクトも充実しています。

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左:食のセレクトショップ「La Maison Plisson」のグッズ。
右:地下のワインセラーには、高級なものもあれば手ごろなものもあり、バランスのよい値段設定が魅力。
[住所]93 Boulevard Beaumarchais 75003 Paris [営業時間]8:30~21:00

目を引くパッケージの食料品たちに囲まれては、「あれもこれも」と、ついつい手が伸びてしまいます。また、おしゃれなエコバッグやかわいいロゴ入りグッズもあるので、そこで買い物をすることが一種のステイタスであるような、特別な印象を与えられ、どんどんカゴに追加してしまうのでしょう。フランス人は滅多にムダ使いをしない人たちですが、食にはお金をしぶりません。ふだんの買い物と、ときどきのぜいたくをうまく織り込みながら、日々の食生活を充実させ、楽しんでいるのです。

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