12月に入り、パリの街はクリスマス気分が盛り上がってまいりました。イルミネーションやモミの木が販売され、どこのお店もクリスマス一色です。
12月1日になると、子供たちは1日ずつアドヴェントカレンダーをめくり、クリスマスを心待ちにします。大人たちといえば、そのカレンダーを見ながらクリスマス、そして年末が日に日に近づいてくることを実感して焦るのですが……。
左:クリスマスカラーがちりばめられたチョコレートがけパネトーネは、サダハルアオキのもの。
右:フローリストあやこさんが手がけるシックでおしゃれなAtelier Carminのクリスマスリース。
そして、クリスマスムードと同時に、本格的な寒さになってきました。パリのアパルトマンは中央暖房システムの建物が多く、一歩建物の中に入るとぽっかぽか。部屋ごとに暖める日本とは違い、こちらではアパルトマン全体を暖めますので、真冬でも家の中では半袖で暮らすフランス人(日本人も!)も少なくありません。
しかしながら、寒い日が続くと、私たち日本人はどうしてもお鍋を囲みたくなりますよね。この時期に日本人同士が集まると、メニューはたいてい鍋料理。食材を持ち寄りお鍋を囲んでいると、身も、そして心まで、しっかり芯から温まります。
それではいったい、フランス人は寒い日に何を食べたくなるのでしょうか? 私たちの〝お鍋〟にあたいするもの……思いついたのは、チーズでした。フランスのパーティに欠かせない食材ですので、クリスマスシーズンに向け、スーパーのチーズ売り場はいつもより豪華なラインナップになります。
左:スーパーのチーズ売り場に所せましと並ぶチーズ。
右:パーティ用のチーズも続々と登場。選びきれないほどに……。
なかでも私の楽しみは、9月中旬から5月、寒い時期だけに出まわる「Mont d’or(モンドール)」。塩水で洗いながら熟成されるウォッシュタイプのクリーミーなチーズで、エピセア(モミの木の一種)がまわりに巻いてあり、開けた瞬間、香ばしさが漂います。この濃厚で独特の香りをもつモンドールは、常温で焼きたてのバゲットと食べてもおいしいですが、木箱のままオーブンで焼き、フォンデュにして食べるとまた格別。
食通の友人から教わったレシピですが、モンドールの表面にナイフで穴を開け、小さく切ったにんにくを刺し、白ワインを大さじ1ほどを加え、200度のオーブンで25分ほど焼いたらできあがり。とろとろになったモンドールをすくい、ゆでたじゃがいもや野菜にかけ、シャルキュトゥリと呼ばれる生ハムやサラミと一緒にいただきます。冷えた白ワインもお忘れなく。
超簡単なのに、極上の味。こんなにおいしいチーズ料理を手軽に楽しめるフランス生活に感謝する瞬間です(笑)。
左:ラクレット用チーズ。これを専用のホットプレート(長方形に切り分けたチーズを溶かす器がついているもの)で溶かし、じゃがいもやシャルキュトゥリとともに。
右:モンドールフォンデュ。フランス人はじゃがいもと生ハムのみをひたすら食べるが、わが家では蒸したにんじんやブロッコリーも一緒にバランスよく。
専用のホットプレートを囲み、チーズを溶かして食べる「ラクレット」はお鍋の感覚にも似ていますが、私は木箱のまま焼くことができる「モンドールフォンデュ」が、味といい便利さといい、断然好みです。
日本ではスイス生まれのチーズフォンデュが有名ですが、フランスでもさまざまなタイプのチーズフォンデュが楽しめるのです。日本の鍋に代わる、フランス冬の定番メニューといえるでしょう。