ノエル(クリスマス)が近づき、パリの街は人であふれかえっています。プレゼントを買い求める人々が大きな紙袋を抱えて歩く姿、子供たちがノエルの歌を歌いながら歩く姿、このノエルという、年に一度のお祝いに向かう人々の楽しい雰囲気が今、パリの街を包んでいるのです。
左:パリのショッピングモール内にそびえ立つトナカイとツリー。
右:パリ市庁舎前もノエルの雰囲気に。毎年、クリスマスからお正月にかけて、パリ市内のメリーゴーランドが無料になる。
この時期、フランス人はそれぞれのノエルに向けて準備を進めます。一般的にノエルは家族と過ごすもの。年に一度、家族・親せきが集まり、大勢で食卓を囲みます。そこで全員がプレゼント交換を行うので、今の時期、家族が多い人たちはプレゼント選びにすっかり翻弄されている、というわけ。わが家は義母と家族だけで、ということが多いので、プレゼントはそこまで必要ではありませんが、そのかわり、ディナーのメニュー選びには毎年頭を悩ませています。
イブのディナーは、アペリティフのシャンパンから始まり、肉派と魚派に分かれますが、前菜にはフォアグラや生ガキ、オマールエビなどの新鮮な魚介プレートを。メインには、ほろほろ鶏のロティやサーモンのパイ包みなんかも定番のメニューです。そして、デザートにはビュッシュ・ド・ノエル。街じゅうのお菓子屋さんに並ぶビュッシュを物色し、念入りに選びます。
ノエルは、イエス・キリストの誕生を祝い、年に一度、フランス人たちがとびっきりのぜいたくをし、ごちそうを食べる日なのです。
左:老舗パティスリー「ダロワイヨ」のビュッシュ・ド・ノエル。クマがひっくり返っているのは、なぜ?
右:花屋さんの前ではモミの木が売られている。それを男性たちがせっせと運ぶ姿もパリの冬の風物詩。
さて、そんな楽しいクリスマスの時期に出まわる、ヨーロッパならではのお菓子をご存じでしょうか。
「サンタクロース」といえば誰もが、子供たちにプレゼントを届けてくれる、赤い服を着た白髪にヒゲもじゃのおじいさんを思い浮かべることでしょう。そのサンタクロースの起源となったのが、子供の守護聖人である聖(セント)ニコラウス。
去る12月6日は「聖ニコラウスの日」でした。ベルギー、オランダ、ドイツ、オーストリア、スイス、フランス(特に北東部アルザス地方など)で祝われる子供のためのお祭りで、フランスでは「サン・ニコラ」と呼びます。17世紀ごろ、ひとりのオランダ人がアメリカにわたり、このお祭りを伝えたことがきっかけとなり、いく度と形を変え、今のサンタクロース像が世界に定着したといわれています。
セントニコラウス、センニコラース……サンタクロース!
左:ちょっとかたいタイプのパン・デピス。シュガーコーティングされていて美味。
右:伝統的なレシピでつくられたパン・デピス。「Sebastien Godard(セバスチャン・ゴダール)」のものがお気に入り。
そのお祭りで配られるのが「スペキュロス」や「パン・デピス」と呼ばれる、はちみつとジンジャーなどのスパイスがきいた焼き菓子です。スペキュロスは日本でも見かけるようになりましたが、パン・デピスはあまり見かけないように思います。
パン・デピスは、はちみつがたっぷり入っているため、パウンドケーキよりかたくてずっしりと重いケーキ。初めてパン・デピスを食べたとき、パサついたような、けれどねっとりとした食感に驚きました。好き嫌いが分かれるちょっとクセのあるお菓子ですが、私は大好きです。毎年、ノエルの時期になると食べたくなるので、おいしいパン・デピスを薄めに切り、紅茶やカフェオレと一緒にいただいています。
師走の忙しさの合間に、甘くてスパイシーなパン・デピスがふっと心を落ち着かせてくれるのです。さあ、パン・デピスでひと息ついたら、2017年に向かってもうひと息がんばりましょう。